夜、閑散としたミナミを法善寺に向いて歩く。
久々の鮨うちやま。
午後7時、わたしが先に着き、まもなく金城院長が現れた。
ビールで乾杯し、ぽつりぽつりと言葉を交わす。
昨年5月、かねしろ内科クリニックが平野の地にて開院し、着実に在宅診療を行う訪問先が増えている。
数々の修羅場をくぐり抜け、場数において金城院長の右に出る者はそうそういない。
訪問先の有り様は千差万別。
どんな状況をも呑み込んで、的確迅速な対応ができなくてはならない。
どんと来いといった胆力が不可欠で、窮地をも愛する懐の深さも必要となる。
生来の話し好きでかつ下町生まれ。
飾ることなく胸襟開いて相手に対峙するから、誰とでも打ち解け、好かれ、さっき会ったばかりなのに10年来の仲といった関係がその場で築き上げられることになる。
診てもらう側からすれば幸い。
病に伏し自宅で療養し、何かあれば金城院長が駆けつけてくれる。
すでに旧知の仲。
だから、最期、金城院長に看取られるのだと思えば安心だろう。
そのようにして、金城院長は多くの方々の最期に立ち会ってきた。
最期の最期、毎回、その場を動けなくなる。
そこに座り込み、旧交を惜しむ。
時に何時間をもその場で過ごすことになる。
そんな話を聞いて思う。
誰にでもできる仕事ではない。
天に選ばれた人物だけが担える職務だろう。
そういう意味で彼にとって天職。
同級生として中学、高校を一緒に過ごし、かねちゃんがそのような仕事に携わるなど想像もしなかったが、振り返って思えば、なるほど彼にこそふさわしい。
仕事の話を終えて、日本酒を注ぎ合い家族の近況について報せ合う。
息子が同学年。
彼の息子は塾でも最上位の成績優秀者。
最後までうちの息子は敵わなかったが、親もそう。
わたしもカネちゃんに中学高校を通じ敵わなかったし、今も同様。
仕事への情熱と覚悟という点で、やはりわたしはまだまだ彼の背から教わる立場のままと言えるだろう。
では、また。
閑散の度を増すミナミの街で別れ、それぞれ帰途に着いた。
この夜も大阪星光33期の友人から多くを学んだ。
同い年だが、そんな師が山ほどいるのでほんとうにわたしは恵まれている。