日曜も午後から淀川河川敷へと向かった。
様々な野球チームの練習風景を横目に走って、野球の魅力を再確認した。
単なるキャッチボールであっても惹きつけられる。
だからノックの達人などを目にしたときには、ついつい足が止まった。
自在にバットを振り回し、大飛球をかっ飛ばす。
その弾道を仰ぎ見るだけでも胸がすく。
落下地点にいち早く野球少年が到達し、ボールがグラブのなかへと吸い込まれていく。
繰り返し、繰り返し、そんな様子を目で追ってまったく飽きがこない。
続いて走ると、簡易机を挟んで面談する光景があった。
コワモテのおじさんは監督だろうか。
母も野球少年も座ってはいたが心中は直立不動といった様子に見えた。
監督が王様。
野球チームはどこもそうなのだろう。
次に打撃練習の場面で立ち止まった。
マウンドにマシンが3つ並びそこからボールが繰り出され、並び立つ3人の打者がそれぞれ球を打ち返す。
打者のガタイは逞しく振りも鋭いが、打球は長短あちこちにばらけて飛んで、それに合わせて守備陣が右へ左へと走り回る。
これまた見ているだけで実に楽しい。
そうそう、野球は見ているだけで十分楽しいのだった。
打撃練習の隣のエリアはブルペンになっていた。
投手が3人並んで力いっぱいボールを投げ込んでいる。
なんとそのうち2人がサウスポーであった。
日常の暮らしのなか、サウスポーをお見かけするなどめったにない。
野球は非対称であり、右と違って左はアート。
左腕から投じられる白球が風を切って空気を裂く。
わたしはしばらくその球筋から目が離せなかった。
走り終え、いつものセブンイレブンではなくこの日はファミリーマートで宴の食材を選んだ。
サウスポーが目に焼き付いていたので、ビールを飲みつつYouTubeで江夏をみた。
昭和43年。
わたしたちが生まれる前のこと。
阪神は巨人と熾烈な優勝争いを繰り広げていた。
9月の4連戦は雌雄を決する天王山だった。
初戦は息詰まる投手戦となった。
江夏と高橋、両左腕が投げ合ってスコアボードにはゼロが並んだ。
この試合、江夏には奪三振の世界記録がかかっていた。
新記録は王さんから取る。
そう江夏は予告していたが、試合中、江夏は大事な場面で勘違いをしてしまった。
四回表、王から三振をとったとき江夏はそれで記録を塗り替えたと思ったが、実はそこでまだタイ記録である392に並んだだけだった。
そこから江夏は、次に王の打席が来るまで打たせて取った。
手を抜いているとしか思えなかったが、誰もが手球に取られた。
そして、一巡して七回表、打たせて取るピッチングはここまでだった。
王も江夏も互い本気の果たし合い。
予告どおり、江夏は王を三振に切って取り世界記録を塗り替えた。
何十年も前の映像をみて心が震えた。
ああ、野球の再開が待ち遠しい。