間もなく家というところ。
打撃音が聞こえた。
もしやと思って目を向けると、公園の照明の薄明かりのなか二男の姿が浮かび上がった。
縦横無尽に駆け回り、随所でボールを強く打つ。
打撃音が高らか鳴り響く。
それで心弾んで一日の疲労が癒えていった。
だから家には戻らず、公園のフェンス越しわたしはその様子にしばらく見入った。
息子らがちびっ子の頃から慣れ親しんだ公園である。
いわば庭。
当時はわたしも一緒に遊んだ。
駆け回り、ボールを追いかけまわし、虫を探した。
野球道具を買い子らに野球を教えたのもこの公園でのことだった。
キャチボールをし、ノックもした。
だから、わたしたちにとってはここがフィールド・オブ・ドリームスの場と言えるだろう。
一度、ロケット花火をして遊び、警察に通報されたこともある。
実際に警官がやってきて子らは震え上がった。
この花火事件。
男三人で悪事を働いた記念碑的な思い出となった。
もちろん家内もこの公園に登場する。
印象深いのはラグビーのランパス。
息子らが小さなラガーマンだった頃、家内が即席の鬼コーチになった。
ダッシュを指示し反復横跳びを命じ、そして家内を真ん中に三人横並びになってランパスし、グランドを何往復も駆け続けた。
つまり、ここはわたしたち家族にとってスクール・ウォーズの場でもあるのだった。
ちびっ子の頃とは比較にならない体躯となった二男を眺め、過去を回想しそして気づいた。
いまはもう一緒に走るなどあり得ない。
体力とスピードが違いすぎ、公園で一緒にできることなど何もない。
あの懐かしい時間たちは輝くだけ輝いてあっという間に過ぎ去って、もう戻ってこないのだった。
親など踏み台。
息子らがそこでジャンプし巣立っていく。
見れば、あのプクッとしたちびっ子が強靭体躯な男子に様変わりしている。
やはり成長をこの目にするのは喜ばしい。
夜陰に紛れてひとりニヤつき、わたしは息子の自主トレを最後まで見届けた。