朝、目が覚めたとき、息子はもう家を出るところだった。
ダイニングで顔を合わせると息子が一礼して言った。
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
今年も来年もその先もずっとよろしく。
わたしの言葉を聞き届け、息子は颯爽と出かけて行った。
その背を見送り、今度はわたしが実家に電話を入れ両親に新年の挨拶を述べた。
さっき長男からも電話があったようで、前日には二男からも電話があったという。
孫からのちょっとした電話が嬉しくてたまらないのだろう。
わたしとの電話で父も母も二人から電話があったという話ばかりした。
続いては初詣。
家内と自転車を駆って地元の神社に向かった。
本殿で手を合わせ隣接する算学神社でも同様にした。
その際、奉納された絵馬がいくつも目に入った。
ざっと見ただけで東大理一、東大文一、一橋など。
つくづく思う。
やはりここら地域のレベルは非常に高い。
その足で今度は西宮ガーデンズに向かった。
朝の冷たい風を切り、人も車もない静かな街路を家内の後ろに続いて疾走した。
その背を見つつ思った。
どこに行くのもだいたい一緒。
そういう意味で、夫婦というより同級生に近い。
元旦の初売りは朝9時半から。
オープンと同時に店内に入ったものだから、各店舗のスタッフがずらり並んでいちいちお辞儀するなかを歩かねばならなかった。
ほとんど客はない。
わたしたち夫婦だけでその恭しさを独占しているようなものだった。
わたしは居心地悪くて仕方がなかった。
そして、わたしにとってショッピングはこの世の果てのつまらなさ。
そう再認識させられた。
張り切る女房をよそに、わたしは途中で音を上げ退散した。
ひとり西宮北口の駅まで歩き、そこで入場券を買った。
目当ては構内にある立ち食いそば屋。
花より団子。
21-1-1との日付ある食券が縁起よく感じられ気分がいい。
新年最初の腹ごしらえは西北の若菜そばにて。
思い出深い朝食となった。
その後、家内とともに無人のジムでカラダを鍛え、残りものをおかずに糖質ゼロのビールを分け、ほかほか床暖のうえでくつろぎドラマ『夫婦の世界』に見入って、そしていつしか双方ともが寝落ちした。
以上のとおり令和三年の元旦は、無為を極めたような寝正月となった。
一年の計は元旦にあり。
願わくは今年も来年もその先も、こんな平穏な日々が続きますように。
薄らぼんやり夢と現を行き来して心の底からそう思った。