正月二日目の朝、ひとりクルマで家を出た。
実家の前につけ両親をピックアップし向かうは生駒山上。
後部座席に座る母が言った。
元旦は二人でのんびり過ごし、ほんとうに楽だった。
これまで十分過ぎるほど頑張った。
今後は楽してもらわないとバチが当たる。
だから来年以降の元旦も親戚を招くことはない。
わたしはそう言った。
生駒山上の霊園は例年に比べ人出が少なく、ひっそりと静まり返っていた。
空一面晴れ渡り、山上を吹く風は冷え冷えとしていたが陽射しはほんのり暖かった。
三人で墓を掃除しお供えをして線香をあげた。
「あと10年もしないうちここに入るんかあ」
母がそう言って父も頷いた。
だから帰途、三人でいる空間が非常に貴重なものに思えた。
カーステレオから流れる箱根駅伝往路の中継が、この時間の一回性を強く印象づけた。
家の前で両親をおろしたとき父は言った。
「運転気をつけろよ」
「絶対先には逝かんから安心して」
わたしはそう返した。
事務所に寄るとツバメ君が仕事していたので驚いた。
今日は単なる土曜、そう思えば不自然ではないが奇特なことではあるだろう。
わたしは彼に昼飯代を手渡した。
地元神社で手を合わせ、家に戻ると家内も同様に日常の時間を過ごしていた。
午前中にジムを終え、その勢いを駆って自宅三階の掃除にかかり、各寝室の寝具を全て新しいものに取り替えていた。
だからまだ午後早い時間ではあったが、あとはもう休息と決め込んだ。
一緒にビールを開けドラマ『夫婦の世界』の続きを観始めた。
そして前夜同様、寝落ちした。
夕刻に目が覚め、昼飲みの続き。
今度はNetflixで映画『パラサイト』を観ながら赤ワインを開けた。
やはり名作。
映像からセリフの細部に至るまで見事な造り。
不朽の建造物にも喩えられる完成度と言えた。
明日は『ジョーカー』を観直そう。
女房がそう言った。
正月三日目も寝正月となりそうだ。