強烈寒波襲来との予報に怖気づきながらも、予定通り家内と伊勢を目指した。
前夜、首都圏に緊急事態宣言が発令されGOTOキャンペーンが全国一斉に中止となった。
その影響だろう。
三連休前の金曜なのに伊勢志摩ライナーには空席が目立った。
家内とのんびり車窓から外の景色を眺めて過ごし、伊勢市駅着が10:54。
参道途中にある赤福でまずは限定商品を購入した。
もたもたしていると売り切れる。
だから毎回まず真っ先に赤福で買い物を済ませるのだが、今回ばかりは人もまばらで品切れになる様子は全くなかった。
昼近くになっても気温は零度を下回ったままで寒さが極まった。
その分、心身引き締まり、聖域の静謐が肌身に迫るかのようであった。
外宮をまわり終え、タクシーに乗ったのが11:30。
道はがら空きで10分かからず内宮に到着した。
おかげ横丁を含め辺り一帯が閑散としていたので夫婦揃って驚いた。
伊勢と言えば八百万の神の総本山。
一月序盤の内宮は人でひしめき合っているのが当たり前の光景であったから異様とすら映った。
人影が少ないからだろう。
夫婦で宇治橋を踏み越えて後、各所にて数々の記憶が蘇った。
中学生になる頃までは、お伊勢参りには子らを伴った。
思い出は無尽蔵にあった。
各時代の子らの姿が眼前に浮かび、その像は夫婦共有のもの。
大勢の我が子と共に歩むも同然であり、手を合わせ頭を下げる度、巨大とも言うべき感謝の念に夫婦揃って胸打たれた。
12:20には参拝を終え、宇治山田駅を発って13:20に松阪駅に到着した。
松阪はここ数年、伊勢の帰りに必ず寄るわたしたちの定番コースになっている。
駅から歩いて5分ほど。
和田金の座敷でくつろいで夫婦水入らず、ビールで乾杯し絶品のすき焼きを堪能した。
三重と言えばうなぎ処であり、松阪と言えば牛肉。
食後、目と鼻の先にある大口屋で鰻3尾、丸中本店で松阪牛1kgを買い求め、これで帰り支度が整った。
伊勢志摩ライナーに乗り込んで、人の気配のほとんどない車中にて二次会と相成った。
丸中で買った牛かつ串などを旅のお伴に、夫婦でハイボールを開けた。
終始晴天だったが、奈良盆地に入った途端、窓外は雪景色に変わった。
雪によって車中の静寂が一層深まった。
前に座る家内の柔和な表情が窓ガラスにも映り、静寂だけでなく平穏さもまた多重効果で倍加した。
夫婦で同じことを切に願い、同じ時、同じ場所で手を合わせ、頭を下げてきた。
それを繰り返し、ますます切に願うことは同じものになっていった。
それが夫婦。
伊勢志摩ライナーの居住感が素晴らしいかったからだろう。
静けさのなか、はたとわたしは夫婦の本質に気がついた。