朝、いつもと同様に家内が朝食を整え甲斐甲斐しく用事をし始めたのでその流れのまま、わたしは出勤した。
この火曜からお盆休み。
そう告げることが呑気なことに思え言い出せなかった。
どのみち他にすることもない。
事務所に着くと皆がすでに仕事を始めていた。
平日に休むというのはやはり簡単なことではないのだった。
留守を任せ、日頃足の遠のいている客先を訪ねることにした。
夏休みムードの漂う街をぶらり歩いて、「近くに寄ったので」と軽く挨拶してすぐ退散するつもりが、幾つかの場所では面談が長丁場に及んだ。
結局、いつにも増して業務に励む一日となった。
夕刻、家に戻ると、串カツを食べようと二男が言うのでその足で梅田に向かうことにした。
二人並んで家を出たとき、近所のママと出くわした。
近所のママは二男をひと目見て、息を呑んで目を丸くした。
「大きくなったでしょ」とわたしから言葉を掛けると、近所のママは二男の体躯を上から下まで眺めてただただ頷いた。
息子と二人、電車に乗って梅田の地下街を歩いた。
目指すは三番街の老舗名店「活」。
この時間帯なら行列ができていてもおかしくない。
ところが閑散としていたので驚いた。
やはりいま起こっていることは只事ではないのだった。
コロナ禍の影響をまざまざと思い知らされた。
カウンターに座って待つこと5分。
まもなく家内がやってきた。
おまかせコースを頼んで、三人並んで次々に頬張っていった。
久々食べるが、活の串カツはやはり美味しい。
素材の味がそっくりそのまま衣のなかに包含されて内外の旨みが溶け合わさって、美味が倍加する。
たまに串カツも悪くない。
三人で喜びを分かち合った。
食後、息子とその場で別れた。
星光の友だちが近くにいるから会ってくる、ということだった。
GPSで誰がどこにいるか、彼らは常に把握し合っている。
たとえば帰省の際、東京から大阪に向け時速300kmで移動している息子の様子を友人らはiPhoneにてリアルタイムで視認できる。
将来、彼ら星の光が動き回るエリアはどれくらいの規模になるのだろう。
その画面に描かれる星座をいつか息子に見せてもらおうと思う。