採用選考が解禁となった6月1日、長男の就職先が決まった。
振り返ってみれば、かなりの長丁場であった。
数々の業界に関心を持ち積極的に動き、始動から数えれば一年に及んだ。
大使館をはじめとする複数のインターンを掛け持ちし、副主将としてラグビーに励み、もちろん学業も怠らず、就職活動を通じ様々な社会人と相まみえた。
この期間で息子の成長が大いに促されたように思う。
息子とは日をおかず電話で話してきた。
さすが慶應という背景が分かり、かつ本人のスペックも高いから、伝え聞くフィードバックは耳に心地いいものが多かった。
しかし誰かが何とかしてくれるような楽で甘い道ではなかった。
熾烈な競争を自力で勝ち上がっていかねばならず、肝が冷えるようなハードな山場が何度もあった。
結果、複数の企業から内定を得て、どこでもいいではないかと親は思ったが、本人は最後までこだわり続け、最終的には金融のグローバル・マーケッツ部門と総合商社で迷いに迷った末、総合商社を我が道として選んだ。
そしてこの日、他の候補先をすべて辞退し、もっとも高く熱く評価してくれた会社を彼は朝9時に訪れた。
親としては、やれやれこれで一安心。
それで夕刻、家内と待ち合わせて飲み屋のカウンターでお酒を注ぎ合って互いをねぎらった。
大学に合格したときよりも、ほっとする。
子育てを通じて時折得られるこの安堵感が、実にいい。