朝、事務所前からタクシーを拾った。
西天満まで15分ほど。
男三人で吉原法律事務所を訪れた。
応接室に案内されて、まもなく弁護士の吉原基先生が現れた。
相変わらずの長身で、その上背に頼もしさと安心感を覚えた。
で、話を聞いてもらうこと90分。
ああでもないこうでもないと男三人で持て余していた非言語的な混沌が、吉原弁護士の手によって、明瞭な形に構造化された。
ピッチを俯瞰して見るように、誰がどこに立ち、どこにスペースがあり、プレスをかけるべきがどこで、ノーマークで構わない場所がどこなのか、一目瞭然となった。
さすがサッカーでならした吉原弁護士である。
これで、いつホイッスルが鳴っても大丈夫。
つまり、問題は半分以上解決したようなものと言えた。
吉原事務所を後にして、文殊の知恵を出力し得ない男三人で、今しがた目の当たりにした秘技魔術とでもいうべき思考の名場面について振り返って感心し、次第、話は本題から離れ、「あれだけ見栄えがいいのだからテレビに出れば人気が出るのでは」といった下世話な次元へと移行していった。
まもなく昼。
寿司音羽にて三人でランチして、留守番している女子職員にみやげを持って帰る旨を伝えると、早弁したとのことだったので、男三人、ハッハッハと笑った。
食べ終えて会計の際、わたしは試しに言ってみた。
ひとり、千円ずつでいいよ。
彼らは真に受け、財布を取り出そうとしたからわたしは慌てた。
「冗談、冗談、そういうセコイことを一度でいいから言ってみたかっただけ」
そして、男三人、またもハッハッハと笑うのだった。
おみやげを携えタクシーに乗り、日常へと戻りつつ、思った。
なんでもまずは相談することが大事。
身体のことなら医師や歯科医師、お金のことは会計士、そしてその他厄介事については弁護士の先生。
そうした方々に助けられ、だからわたしのような寸足らずな出来損ないであっても、心やすらかに生きられる。
ほんとうにありがたいことである。