クルマで鳥羽に向かった。
途中、土山サービスエリアで食事しているとそこに若きラガーマンらの姿があった。
家内がその一人に話しかけた。
どこのチームですか。
関学です。
菅平に行くんですか。
これから名古屋で豊田自動織機と練習試合なんです。
そうなんですか、頑張ってください。
そんな会話を交わしクルマに戻って本線に出たところで気がついた。
関学なら芦屋ラグビーのチームメイトがいたはずだった。
いま息子と同じ大学四年で、このたび名だたる総合商社すべての内定を得て息子とは別の会社に進む。
風の便りにそう聞いていた。
そんな彼が間近にいることに思い至らなかった。
夫婦して悔やむが時すでに遅しであった。
息子が小5の秋のこと。
県大会直前に入部した選手の起用を巡って、一部の父兄間で対立が生じ内紛めいたことが起こった。
じっくり話し合って出場機会を調整すれば済むものを、合意形成も曖昧なまま勝利至上が統一見解となったのだろう、結果、親の関係がこじれ、幼い頃から慣れ親しんだチームをその少年は去らざるを得なくなった。
まだ子どもである。
大人のエゴで逆境に見舞われたいうしかなかった。
しかし彼はその逆境を跳ね除けた。
他チームに移籍して以降、中学高校大学と一線で活躍し、今年、超難関である商社全部に受かったのであるから痛快。
見事と言うほかないだろう。
彼を最後に見てから十年以上が経過する。
立派で頼もしい青年になっているはずで、わたしたちはそんな姿を一目見る千載一遇の機会を逸してしまったのだった。
またいつか。
共通の友人が関学にいるとのことであるから息子と会うことはあるのだろう。
あの時のちびっ子がどのような男へと成長したのか。
息子からの話を楽しみにしたい。