名古屋駅前からタクシーに乗った。
「うな富士本店まで」と告げると、運転手の中嶋さんは言った。
いまさっきのお客さんも同じ行き先でした。
名古屋界隈のうなぎの名店などについて中嶋さんからいろいろ教わり、うな辰がナンバーワンだと分かったがかなり遠いので当初の予定通りうな富士を訪れた。
家内が上ひつまぶしを頼み、わたしは上うな丼を選び、肝焼きは二人で分け合った。
焼き加減が絶妙。
ふんわりやわらかでかつパリッとした食感に夫婦で感心しきりとなった。
帰りはぶらり鶴舞駅まで歩き、そこから名古屋に戻ってホテルにチェックインした。
家内は部屋で一休みし、その間、わたしはフィットネスに向かい、泳いで筋トレしサウナに入った。
サウナに入った途端、横に座る結構ながたいの中年男性が話しかけてきた。
「どうすればあんなに長く泳ぐことができるのですか」
その中年男性は五百メートルも泳ぐと肩が重くなってしんどくなるのだという。
それで思い出した。
わたしの隣でやたら手足をバタバタさせ力泳していたのが、この男性なのだった。
「もっと軽く、いつやめていいというくらいの無心で泳げばいいのではないでしょうか」とわたしは答え、「もっと軽く」の部分に説明が必要と感じたが、その空白は埋まらず会話が途絶えた。
そこにちょうど中年男性の顔なじみとおぼしき老年の方が入ってきて、互い先生と呼び合う二人の間でハワイ談義が始まった。
わたしは蚊帳の外となりほっとした。
マッサージチェアに横たわってひとときを過ごし部屋に戻った。
家内の百貨店行脚に付き合って街に出て、前回同様、エスカ地下街で夕飯をとることにした。