部屋に露天風呂がある。
が、どうせ湯につかるならデカいほうがいい。
初日は夢泉景の側の温泉に入ることにした。
伊勢志摩でそうしたとおりまずは繰り返しサウナに入り、頭を空っぽにした。
視界もやがてうすらぼんやりとし始めて、意識レベルは無へと近づいた。
体内に留まる寄る辺が消えてなくなり、疲労はみるみる体外へと押し流されていった。
そのように幸福な無我が極まったところで夕飯の時間がやってきた。
淡路島の野菜や肉や魚が中心の料理がことのほか美味しく、給仕してくれる青年の接遇が申し分なかったから、ほんとうに気分良く食事が楽しめた。
聞けばうちの長男と同い年だった。
関西の強豪校で大学まで野球を続け、高校時代には甲子園にも出場した。
入社した同期20人のうちいま残るのは4人だというが、彼は最後まで勝ち残るに違いない。
将来は実家の寺を継ぐとのことだった。
人と話すことに関心を持ってそれを楽しみ、苦労をも糧としていこうとの前向きな心持ちを有する。
そんな彼がする法話はたいへん聞き応えのあるものになるだろう。
いつか奈良大宇陀にあるその寺を訪ねよう。
わたしはそう思い家内も同感だった。
食後は部屋の露天風呂で安らいだ。
海を照らして白く輝く夜月を眺め、一夜明け日が昇る頃合い、カラダはエネルギーに満ち満ちていた。


