長男にあてて送るよう家内に手渡されたのはアニキのレプリカユニフォームだった。
このところ熱心にトラキチ化している長男に球場ではきちんとしたものを着せてあげたい。
そんな親心が昔懐かしのユニフォームから伝わってきた。
そのついでに陀羅尼助の包みも渡された。
飲み会の多い息子のカラダを気遣う親心がここからも感じられた。
家内の息子ファーストという姿勢は昔から一貫して揺らがない。
事務所へと向かう道すがら、谷町四郵便局に立ち寄った。
郵送にはレターパックライトを選んだ。
ところが窓口で封の厚みが規定の3cmを超えるから返送される可能性があると指摘を受けた。
192円追加してレターパックにしますかと言われるが、息子は留守がちなのでそれだとなかなか手に渡らない。
窓口の女子職員が「開けていいですか」とわたしに尋ねた。
ええ、もちろん。
カネモトのユニフォームをいったん広げ女子職員がその場で器用に畳み直してくれた。
漢方の封も上手に滑り込ませ、お見事、それで規定内に収まった。
わたしは手を合わせて彼女に感謝した。
そのようにしてユニフォームが長男のもとへと届き、この週末、横浜の地にて息子は晴れて正式なトラキチの一員となってタイガースに声援を送ることになる。
わたしが長男にユニフォームを送ったのと同じ時、家内は料理づくりに勤しんで、二男にあてて食料を送っていた。
長男は不在がちなので週末のタイミングで別便にて送るという。
世には自分ファーストな母親がいくらでもいる。
子どものことなど二の次、三の次、場合によってはお飾りとして子どもを利用する。
自分ファーストという、行き着く先は虚しく幸の薄い生き方を子どもの頃から刷り込まれ、そんな生き方を子どもがなぞってしまうとすれば罪深い。
自分よりも大事なものがある。
そうと知り、自分を二の次、三の次としたときのほうが、自分がもっともよく活きる。
わたしたちの世界はそんな「急がば回れ」的な逆説にあふれている。