朝8時、約束どおりお客さんから電話がかかってきた。 業務について打ち合わせしていると、階下から声が聞こえた。 ご飯できたよ。 家内がわたしを呼んでいるのだった。 わたしは電話しながら渡り廊下に出て、階下にいる家内にいま取り込み中であることを指…
貝の蓋が固く閉じているようなものなのだろう。 普段わたしはそのように内にこもって、だから往来で誰かから声を掛けられるといったことがない。 繁華街の客引きでさえ手をこまねく。 内で思念がむんむん蒸して、そんな様子が如実に伝わるのだと思う。 そん…
ジムから戻って食卓に座る。 一日のうちでいちばん心が落ち着くときである。 家内と差し向かいになって日本酒を酌み交わし、今後の旅先の映像などを眺めて夕飯をつまんだ。 ひとつの場所を訪れると、次々と行きたい場所が増えていく。 楽しみが増える訳であ…
かなりの人気店なのだろう。 開店前から列ができ始めていた。 慌てて夫婦で並ぶが前から数えて二十番目あたりとなってしまった。 午前8時半、福井マラソンのスタートと同時、名店「はや川」が開店となった。 が、マラソンのようには前へと進まない。 遅々と…
福井駅の真隣に新しいホテルができた。 夕刻のニュースで紹介されていて、ジムのサウナを出てすぐに予約した。 特に何か観光する訳でもなく、汽車に揺られて福井を訪れただのんびりと過ごす。 是非ともそうしようと思い立ったのだった。 敦賀までのサンダー…
二十代の頃のこと。 連日飲み歩いていた。 勤め人であることが嫌でたまらなかった。 このままではこのまま。 未来が見通せず、それで憂さ晴らしが必要だったのだと思う。 しかし飲んで何かが前に進む訳はなく、朝の重苦しさが増すばかりで、「このままではこ…
電話しながらだったからだろう。 池部駅に停車している電車にそのまま乗って、思ったのとは反対方向へと運ばれた。 単線の電車に乗ることは滅多にない。 その不慣れも手伝ってのアクシデントだった。 タイトな時間を縫うように動いていたから、その時点で次…
夜は鮨こいき。 それがあるから頑張れた。 豊中を皮切りに業務を開始し伊丹を経て阿波座に移動しここでの業務が長時間に及んだ。 しかし、夜は鮨こいき。 だからへっちゃら、頑張れた。 事務所へと戻って保留にしてあった連絡業務に取り掛かり電話をかけまく…
ひさびさ家族四人の予定が合致する。 数年に一回の惑星直列のようなもの。 家内はがぜん張り切って、予約してある焼肉屋に電話を入れ、裏メニューなどとっておきの品について直談判し、肉もいいものを仕入れておいてと念を押した。 そしてまもなく二男からス…
月曜日、仕事が早々に片付いた。 帰途に就き電車に揺られて、考えた。 普段ならジムに行く。 しかし、この日に限って気分が乗らない。 何が起こっているのか。 自分の内を凝視した。 ああ、疲労。 どうやらわたしは疲れているのだった。 では、なぜ。 と振り…
雨が降り続き、どこかに出かけようといった気も起きない。 しかもまだまだ肌寒い。 まったり、といった語はすでに死語だろうか。 この日は突如浮かんだそんな懐かしい言葉とともに過ごすことにした。 新聞をめくると高校生が自死したとの記事に目がとまった…
一体何年ぶりのことだろう。 寿し おおはたの席にありつけた。 寿司はおおはただけで十分。 そう言っておおはた一筋を貫いてきた安本先生のおかげ。 ほんとうにありがたい。 サガラさんも含めこの夜は男三人、至極の鮨を味わって日本酒を楽しんだ。 睦まやか…
西宮北口にだけジムがあるわけではない。 終業の時間に合わせて、各所を活用しよう。 そう思ってこの日は帰りに北浜のジムに寄ってみた。 駅の真上にあって至便。 利用しない手はない。 が、西北に慣れているからプールが狭く窮屈に感じられた。 レーンに複…
先日のこと。 料理教室の場で「大学生がいるような歳には見えない」と口を揃えて驚かれ、まあよくあるお世辞だと受け流しつつ、出し抜けに、かなりのリアリティをもって家内は思った。 そろそろ息子たちが結婚する。 よく考えれば自分が結婚したときの親の年…
休日に出勤するなどひさびさのことだった。 ここで前へと進んでおかないと後で苦しい。 であれば休みという自由時間を仕事に充てるのが正しい。 正しいことでありかつ自営業者であるから、何ら忌避感なく無人の事務所にて業務に邁進した。 いつもより密度高…