休日に出勤するなどひさびさのことだった。
ここで前へと進んでおかないと後で苦しい。
であれば休みという自由時間を仕事に充てるのが正しい。
正しいことでありかつ自営業者であるから、何ら忌避感なく無人の事務所にて業務に邁進した。
いつもより密度高く仕事がこなせ、昼にいったん休憩を入れた。
カウンター席にすわってラーメンを食べていると、唐突に隣席の中年女性にぽんぽんと肩を叩かれた。
「一緒にビールでも飲みません?」
ひとり飲みでおばさんは退屈していたのだろう。
しかしこちらは仕事の途中。
また今度と言って、半身になって背を向けた。
そのようにちょっとした誘惑などを軽くいなして業務を続行し、夕刻にはかなりの分量が片付いた。
これで明日以降の見通しがすっきりついて、大いに呼吸も楽になった。
帰途、大阪駅のステーションビルにあるジムへと寄り、サウナに入って風呂につかり、冷たく吹きすさぶ強風を湯冷ましに家へと戻った。
家内はこの日、あれやこれや料理づくりに励んでいた。
ヘルシーな食材の数々を前に女房はワインを注ぎ、わたしは炭酸水を手に取った。
今後のことを考えれば言わずもがな。
単に健康であるだけでは足りず、明瞭であらねばならず頑健でなければならない。
休日だからといって気を許していては始まらない。
もうこんな歳へと至ったが、ちょっとでもマシな余生を送るには試合を控えたアスリートみたいな心得が多少なり欠かせないのだった。