今回横浜を訪れ「刀削麺」との表示がやたらと目に入った。
それで気になっていたから、この日の昼は刀削麺で決まりだった。
食べて昔の記憶がよみがえった。
何年も前のこと。
夫婦で上海を訪れ、そこで気に入ったメニューが刀削麺だった。
日本のラーメンを凌駕する。
そう強く印象に残るほど美味しかった。
この夏、刀削麺を食べにどこか本場をぶらり旅するのもいいのでは。
そんなことを思いつつ店を出て事務所に向いて歩いていると、「夜は寿司屋を予約した」とのメッセージが家内から届いた。
予約時間が午後8時だったから7時までたっぷり仕事して事務所を後にした。
店に到着すると家内が先に座っていた。
隣の席に腰掛けざっとカウンターを見渡した。
席は地元の品のいい年配者で占められていた。
手狭な店であるから、そんな客同士の会話が前後左右を行き交った。
話題は関学についてだった。
誰それが関学であの人もこの人も関学といった感じで延々と関学びいきの話が続いた。
なるほど、所変われば品変わるの喩えのとおり。
視点を引いて地域全体を見渡せば、ここは関学のお膝元、その存在感が圧倒的な土地柄なのだった。
わたしたちは関学に縁もゆかりもない。
だから話に混ざるなどできず、かといってここで慶應や早稲田など出しても話の腰を折るだけだろうから、目の前を通り過ぎて行く話題にふむふむと曖昧にうなずくばかりとなった。
そしてわたしは寿司を食べつつ刀削麺のことを考えた。
上海でなら刀削麺の存在が際立っていた。
そのように土地土地で地域独特の特色があった方が面白い。
そんな多様に触れるのが旅。
地元にありながら、いつしかわたしは遠くを旅するような楽しい気分になっていた。