日本シリーズ第6戦が始まっていた。
日本球界を代表する両エースが投げ合っている。
そして今日勝てばタイガースの日本一が決定する。
だからだろう、ジムはガラ空きだった。
わたし自身、最高峰の決戦に関心がないこともない。
が、どちらかに肩入れしている訳でもないから、見逃せないと思うほどでもなかった。
ガラ空きのプールで泳ぎつつ、先日、33期の友人がしみじみと漏らした言葉をわたしは思い出していた。
この歳になると、もう男女のことなどどうでもいい。
要は、同じ細胞が何らかの綾で分化し異なる形となっているだけで、俯瞰してみれば男女など同じもの。
そこに差異を見るのはいわば幻想で、そんな幻想を成り立たせていたマジックが解けてしまえば、もはや自嘲的な気持ちしか残らない。
なるほどと周囲にいた33期全員が深く頷いた。
若き頃、皆の胸を熱くさせていたような恋愛へのパッションはとうの昔に消え去って、言うなれば正気に戻り、いまや友だち同士で酒でも飲む方がよほど楽しい、誰もがそんな感覚に至っていたのだった。
それと似たようなことかもしれない。
タイガースもバファローズも近似の場所をホームにし、選手の誰をどう入れ替えたところで、結局は似たようなもの。
つまりは同じ。
どっちも頑張れ、という話にしかならないだろう。
泳ぎ終え、筋トレしつつ過去を振り返った。
本気も本気、固唾を呑んでその行方を見守ったことがあったとすれば、息子たちの合格発表くらいだろうか。
まるでロシアンルーレットさながら。
あれは、しびれた。
中学のときも大学のときも、他に何も手につかないというくらい気を揉んで、いま思えば正気を失う寸前だったと言えるかもしれない。
そしてサウナで野球中継を眺めつつ思った。
あのハラハラドキドキに比べれば、スポーツの結果についてはほんとうにどっちでもいい。
汗が心地よく滴り落ち、運動後のカラダが更に浄化されてゆく。
ほどよい温熱に身を預け、いまの心の平穏を心底ありがたいと感じた。