夕刻、ハンドルを握る家内の頭に思い浮かんだのが風月だった。
クルマで5分ほどの距離にいたのだから無理もない。
わたしも大賛成であった。
午後6時であればまだ夕飯には早いのだろう。
待たされることなくテーブルに案内された。
お好み焼きと焼きそば大、ともにミックスを注文した。
子らのみやげにするモダン焼きミックス2枚も忘れない。
客は近隣住民ばかり。
部屋着のような格好でコテにのせたお好み焼きをめいめい口に運ぶ。
各スペースがまるで居間といった風にも見える。
年配者の一人客の姿もちらほらあって、もしかしたら近所に住む独居者の方々なのかもしれなかった。
だからそんななか、歳取った夫婦がそれぞれのお好み焼きを切り分け互いの皿に載せ合ったりする様子など目にすると心温まる一方、両岸の差が如実に過ぎて、ひんやり冷たいものを感じない訳にはいかなかった。
大阪下町の実相がお好み焼き屋において一望できる。
前に座るのは家内。
大阪下町のソースの匂いがなにわ情緒を醸し出し、隣席の歳取った夫婦みたいにいついつまでもと願うような気持ちを誘った。