土曜の朝、始発電車にひさびさ乗った。
車両のなか、幾人も見慣れた顔を見つけひとり懐かしんだ。
その昔、土曜であっても始発で仕事に向かうのが当たり前だった。
似たような境遇の人は少なくなく、そのうち幾人かと顔見知りになった。
もちろん言葉を交わしたりはしない。
が、彼らの存在は励みになった。
ここ最近はその「当たり前」から足が遠のいていた。
遠ざかっていた別の時間に舞い戻って、その場を懐かしみつつ不思議な感覚を覚えた。
タイムスリップしたような感覚というのだろうか。
わたしが不在であっても、同じ登場人物によって構成された同じ時間がそこには流れ続けていた。
つまり、世界は幾つもあって、普段は交差することなく別の流路をたどっている。
こんな感じを味わうと「あの世」があっても奇異とは思わない。
そんな奇妙な感覚で始まった土曜であったが、仕事しているうち流路は混ざって世界はひとつになった。
夕刻、無事終業の時間を迎えた。
この日の最終地点は芦屋。
阪神電車の駅のホームに立って、芦屋川を伝って山々から吹き渡ってくる涼風を全身に浴びた。
帰宅前、自分をねぎらい一杯やって、秋の到来をことほいだ。