料理教室に参加したときのこと。
食事が終わって、さあ後片付けとなったとき、先生が言った。
後片付けはこっちでやるのでいいですよ。
で、家内は驚いた。
食べたままの食器をほんとうにそこに残し、席を立つ者が何人かいたのだった。
土曜日の料理教室の場である。
暇な人が集まっているはずで、急ぐ必要があるとは思えない。
せめて洗い場に自分の食器を運ぶくらいはすべきだろう。
家内は何人かの有志と手分けして洗い物を手伝った。
それが家内にとっては当たり前のことだった。
家内は昔のことを思い出した。
かつて家内をあてこすった人物は、食べ終えて片付けの段になるとすっと姿を消した。
毎回そうだったからそれが習性だったのだろう。
そのしわ寄せ分を担ったのは家内だった。
人間は二種類に大別できる。
後片付けに身を投じる人がいて、当事者なのにエスケープする人がいる。
うちの血筋は全員が前者であるから、後者が紛れ込むと後者はとっても楽であろうが、もし息子の女房がそのような人であればと思うと心が痛む。
だから、キーワードは後片付け、となる。
一緒に生きていける相手かどうかがそんな些細な場面で明白となる。
相手に献身性のかけらもなければ、家庭が人間不信の場になりかねない。