滞在四日目、いったんパリを離れた。
メトロでパリ東駅に出て、TGVに乗ってストラスブールへと向かった。
車中では前夜テイクアウトした品など分けて食べ、ちょっとしたピクニック気分を満喫した。
パリの喧騒を後にしてカラダも心も少しずつ緩んでいって、ストラスブールに着いた瞬間、驚いた。
空が一段と青く、空気が澄み切っていた。
その透明感にすうっとカラダが軽くなったような心地がした。
駅から市街地へとぶらり歩いて、先にホテルでチェックインを済ませた。
案内された部屋が広くて快適。
家内は言った。
「今夜は部屋で食べよう」
ストラスブールでは二泊三日の旅程を組んでいた。
まずは小手調べ。
美しい街並みにカラダを馴染ませるように無目的にそこらを歩いた。
昼になって予約していたレストランを訪れた。
ワインの白赤、野菜と肉、すべてが絶品でわたしたちは感動し通しとなった。
食材のレベルが段違い。
美味を通じてわたしたちはこの土地ならではの豊かな恵みを実感した。
昼食後も散策を続け、歩き疲れたところでホテルに戻ってラウンジで一休みした。
もちろんここで飲んだワインにも心を揺さぶられた。
ちょうど旅の疲れが出る頃だった。
夕飯の予約をしていた店にキャンセルのメッセージを送るとすぐに電話がかかってきた。
都合がつくなら絶対にうちの店に来た方がいい。
その自信に満ちた様子に惹かれ、翌日の夜の席を予約してもらった。
家内は部屋でくつろぎ『エミリー、パリへ行く』を観始めた。
同時に、テイクアウトする品をネットで調べ、評判のベトナム料理店に行き当たり、もちろん買いに出るのはわたしの役割だった。
わたしはひとり街に出た。
土地の匂いを胸深く吸って、異郷を歩く。
そこにある日常がすべて鮮やかに迫ってきた。
時間がゆっくりと流れ、その一瞬一瞬が濃密に感じられた。
地元のスーパーで市井の方々に混ざって買い物するときその濃度はマックスに達した。
ビールなど飲み物を調達し任務完了。
さあ、部屋でくつろごう。
そう思うとウキウキ感が湧いて出た。
パリに着いてからずっと強行軍が続いていた。
だから部屋で夕飯といった何でもないひとときに焦がれるような気持ちになったのだろう。
旅の途上での中休み。
そんな一日もまた記憶に深く残る。
何もしないで、ただゆっくりと時間を過ごす。
そんな時間の大切さを旅先にて痛感した。