メールに返信し電話に対応し業務をこなし人と会い、その合間合間、家内から届くショートメールに目をやる。
先日食べた超一級料理を真似て幾つか試作品を仕上げたようだ。
お皿に鎮座するそれら作品群が写真となって送られてくる。
なかなかの出来栄え。
一目で美味しいと分かる。
写真に続いて、それら作品群を実際に食した息子らの様子もリポートされる。
砂浜に築造された宮殿が、押し寄せる波に丸呑みされるようなもの。
作品群は、瞬く間に平らげられた。
作った料理が「平らげられる」ことほど母にとって嬉しい賛辞はない。
母冥利に尽きるかのような上機嫌が行間からこぼれ出している。
ぺろり平らげることにかけては卓越する息子たちである。
食ってこその男子。
食の細い男子など先が思いやられる。
食わねば先頭に立てるはずがなく、ぶつかりあっても押し返せるはずがない。
声は出ず足も出ず当然に手も出ない。
だから食べていればそれだけで男子として及第。
蓄積された力がいつかみなぎり炸裂することになる。
これでもかと作る母がいて、いくらでも食べる息子らがいる。
絶妙のマッチングではないかと感心しつつ、その「作りっぷり」と「食べっぷり」のハーモニーに何か深い喜びのようなものを感じる。
押し寄せる仕事を一つ片付け、家族の様子にふと目をやって、また次の仕事へと向かっていく。
こうであってこそ男冥利に尽きるというものだろう。
夕刻を過ぎると草臥れ果てるが、心は充足感で満ちている。
家族のもとに帰って一休みし、一夜明け、また前線へと踏み出していく。
明日はどんな仕事と出合え、どんなショートメールを目にすることができるだろう。
負荷ある日々であってもいろんなことで彩られるものだから、結構楽しい。
男であるのも悪くない。