こんな時期に夏日になるなど想定していなかった。
涼しければ過ごしよいパリであるが、暑いと一変する。
冷気のなかでは鳴りを潜めていた街の匂いが、気温とともに勢いを増し、そこら中に溢れ出す。
こうしたことは日本では限られた場所でしか生じない。
そういえば、ストラスブールのホテルの人が言っていた。
パリでは、匂いは大丈夫でしたか。
前半は涼しかったから気がつかなかった。
それでもそれを補って余りあるほど食事は美味しく、滞在がとても楽しく充実したものになっている。
昨年のスペインでも家内が調べて選んだ店を回って大満足であった。
今回のパリのラインナップはそれを凌駕する。
選択に意外性もあって、こんな彼氏がいたらさぞかしデートは楽しいものになるだろう。
いい店ばかりであるから食が進んで、結局、一日三食はとても無理。
二食で十分にお腹が満たされるという毎日が続いている。
iPhoneにダウンロードしたアプリで地下鉄もバスも気楽に乗れて、ウーバーも便利に使えそこらじゅうをタクシーが走っているから、「足」に困ることがない。
おまけに好天にも恵まれた。
申し分のない旅行であるが、ときどきちらり日本がよぎってその頻度が増してきた。
パリ滞在は今日を含めてあと3日。
名残り惜しさより、もうそろそろ日本に帰りたい、との気持ちが上回り始めている。
旅することで、その土地への愛着が生まれると同時に、帰る場所への思いも深まる。
残りの時間も楽しく、帰路も楽しい。
旅はなるほど一粒で二度おいしい。