最終の業務地は針中野だった。
無事に成約し、これで6月だけで3件の新規顧問を請け負うことになった。
いずれもクリニック。
振り返れば、すべての起点は「タコちゃん」に行き着く。
厳密に言えばその前にハザマくんがわたしを顧問に招き入れてくれたからうちの事務所がこうなった。
そのように起源については諸説ありということになるだろうが、こう整理するのが一番自然だろう。
ハザマくんが声をかけてくれ、ハザマくんが頼むくらいだからとタコちゃんが声をかけてくれ、タコちゃんが頼むくらいだからということで、八方へとツテが広がり現在に至る。
当初、うちに医療系の顧客はまったくなかった。
介護事業の認可業務を手伝っていたとき、そこに携わるコンサルが医療系ばかりを顧客にしていた。
一体どうすれば、そうなるのだろう。
わたしにはそんな道筋は思い描けなかった。
だから、あの頃の自分に今の状況を話しても、プロセスが「マンガ」みたいな話であるから、信じないだろう。
つまり、計画とは無縁の、いわば偶然の連続による産物であって再現性もない。
ふと事務所スタッフに聞いてみた。
「いま顧問先は何件くらいになってるのだろう」
で、驚いた。
まあ地道にやってきただけ。
でも気づいたら、えらいことになっていたようである。
業務を終え、金曜だったから女房を誘って食事でもと思ったが「肉を焼くからワインを」との下命を受け、赤ワインなどフランスものを3本見繕った。
仕事の成果を女房と分かち合う。
それも格別であるが、それよりなにより「今夜は肉を焼くからワイン」という何気ない会話のなかにこそ人生の豊かさが宿っているという気がした。
家に戻ると家内が夕飯の支度を整えていた。
ほんとうにいつもおいしい食事がありがたい。
夜は家内と一緒にNetflixで『隣の国のグルメイト』を観た。
来月のソウル行脚に向けて胸が膨らんだ。
この「マンガ」のような暮らしがいつまでも。
ソウルでの楽しい食べ歩きを想像しながらそう願った。