眼下に明石海峡大橋が姿を現し、続いて万博会場の大屋根リングが視界に入ったとき、ようやく地元へ帰ってきたのだと実感した。
まもなく着陸し、荷物もスムーズに受け取ることができ空港の外へ出た。
覚悟していた蒸し暑さはなく、拍子抜けするほどだった。
リムジンバス乗り場にて30分ほどの待ち時間を過ごしたが、思った以上に風が心地よく全く苦にならなかった。
やがて現れたのは、阪神タイガースの選手が大きく描かれた特別デザインのラッピングバスだった。
胸の奥にこれ以上ないほどの「帰国感」が広がっていった。
メルボルンを発ったのは前日の土曜だった。
夕刻、揃いのマフラーを首にまく一団を多く見かけた。
ホテルの人に聞いたところ、この日、オーストラリアン・フットボールの天王山の試合があり、紺と赤のストライプ柄は、メルボルン・デーモンズの公式マフラーだとのことだった。
もし我らトラキチが彼の地の流儀に倣うなら、黒と黄色の縦縞マフラーを誇らしげに首に巻いて街を闊歩するということになるだろう。
阪神バスの座席に身を預け、流れる景色を眺めながら自分がどこに属しているのかというアイデンティティを噛みしめた。
JR尼崎のロータリーに到着し、そこからほど近い場所にある「すし田」へ向かった。
メルボルンの食事はこのうえなく美味しかったが、日本の味への思慕が消えることなかった。
やはり帰国一番のご褒美は寿司に尽きる。
旅の余韻にひたりつつ、改めて自分がどこに属しているのか、ありがたさとともに深く心に刻んだ。