ホテルの朝食は3日で飽きた。
素晴らしいカフェが軒を連ねるメルボルンである。
4日目以降はホテルの朝食を放棄した。
ひんやりと澄んだ朝の空気を胸いっぱいに吸い、女房と並んで歩いて店を探す。
そんなひとときは旅の醍醐味そのものと言えた。
気候がよく夜はぐっすり眠れ、食事はどれも美味しく、街並みが美しいので自然とよく歩く。
気がつけば歩数は連日二万歩を超えていた。
おかげで体調は日ごとに上向き、夫婦そろって「元気さ自己ベスト」が塗り替えられていった。
それに人が優しくとても明るい。
それで確信したことがある。
もし心身に何らか不調を抱える人であっても、この街の環境なら日々を幸せに過ごすことができるのではないだろうか。
健康な人ならなおさら。
心と体の歯車が噛み合って、最高のコンディションへとチューニングされることだろう。
結果、ますます元気になるわたしたちであったが、とはいえ寄る年波。
一日三食はとても無理。
二食をしっかり楽しむスタイルに落ち着いた。
女房が調べた評判の店を、トラムを駆使し街を歩き回って次々と訪れる。
今回の滞在での食事記録は、メルボルン食べ歩きモデルコースと胸を張れる仕上がりになったと自負できる。
7泊8日を仲良く過ごし、語り尽くせぬほど思い出も盛りだくさん。
さあ充電完了。
二人揃って晴れ晴れと帰国する。
が、その一方、メルボルン・ロスといった喪失感が胸に生じてやや疼く。
遠からずまた訪れることになるに違いない。