朝一番のラベンダーエクスプレスに乗るため金曜の夜に札幌に入った。
予定どおり乗車して朝のうちに富良野に到着した。
ひんやりとして澄んだ空気が実に肌に心地いい。
そこからレンタカーに乗って移動し、改めて実感した。
北海道は、でっかい。
日頃、小さな空間に身を置いてどこか窮屈な思いをしながら暮らしている。
だからこの広大な地の懐に抱かれると、身も心も伸びやかになる。
そして、この開放的な空間体験は一度味わうと癖になる。
だからだろう、私たちは何度でも北海道に呼び戻される。
運転しながら見晴るかす大地を眺め、かつて子どもたちを伴って北海道を訪れたときの思い出話になった。
あれは15年前の10月下旬のこと。
どこで湯に浸かり何を食べ、どんな風に過ごしたか。
記憶のディテールがわたしと家内の複眼的な視点によって、次第、精緻に立ち上がっていった。
やはり思い出は一人で胸に抱えるより、共有した方がいっそう立体感が増して味わい深い。
当時、子どもたちは芦屋ラグビーに入ったばかりだった。
10月と言えば県大会を間近に控えた重要な時期で、そんなときに家族で北海道を旅するなど、さぞ周囲は拍子抜けしたことだろう。
普通ならそれで干されるところ、長男は実力を買われ、入って間もないのにレギュラーに抜擢された。
数々の名場面がいまも夫婦の目に鮮やかに浮かぶ。
一方、二男は長男と異なり線が細く絵が上手で、およそラグビー向きの体格でも性格でもなかった。
しかし、そこで培った基礎がやがて花開いた。
中3になる頃には体躯もしっかりとしフィールドホッケーでチームに欠かせない主力となった。
高校で大阪代表に選ばれ、大学生になっても大阪代表に選出され続けた。
北海道は、でっかい。
息子たちの思い出をのびのび語るのに、十分なスペースがあった。