滞在4日目の火曜朝一番。
ホテルのレストランでお粥だけ食べ、ピックアップ場所であるサザンクロス駅へと向かった。
定刻朝7時半、バスはまだ現れない。
路上は寒く、家内はすぐそばのホテルのロビーにて待機した。
まもなく、少し遅れてバスがやってきた。
この日予約していたアクティビティは「パッフィンビリー鉄道」だった。
メルボルン郊外の緑豊かなダンデノン丘陵を走る保存鉄道で、もともとは林業用として使われていた線路が今は観光列車用に用いられている。
レトロな趣を残す蒸気機関車と開放的な客車が大きな魅力。
窓枠から手や足を投げ出して座るのが定番の楽しみ方で、ガイドブックなどでもそんな光景がしばしば紹介されている。
案内役のガイド、Jonoさんがジム・キャリーを思わせる明るい雰囲気の人で道中が楽しい。
子どもの頃にこの鉄道に乗った思い出を話してくれ、それでわたしたちも童心へといざなわれた。
ガイドブックで見た通り、わたしたちも窓枠から手足を出して座った。
冷気が肌を刺した。
季節感で言えば、ちょうど冬の頃の遠足みたいなもの。
童心であるからそんな肌寒さにもすぐに馴染んだ。
森の中を列車が走り抜ける。
木の香りを胸いっぱいに吸い込み、蒸気の音に心を弾ませた。
女房と足をぶら下げ笑い合っているうちに、あっという間に時間が過ぎていった。
昼過ぎにメルボルンに戻った。
トラムに乗って「クイーンズ・ビクトリア・マーケット」へと出かけた。
ここは市民の台所とも言える大市場で、野菜や果物はもちろん、チーズや肉、魚介まで何でも揃い活気に溢れていた。
魚屋で穫れたて新鮮な牡蠣とエビを買い、軽食屋で揚げたて熱々のフィッシュ&チップスときりりと冷えたワインを調達した。
どれも絶品。
一口食べると、新鮮な海の幸の旨みが口いっぱいに広がった。
唸るほどの美味しさだった。
こうした食事も旅の醍醐味に他ならない。
ほろ酔いでぶらり歩いて、季節がいいから歩くのがまったく苦にならない。
いい頃合い、ホテルに戻ってから支度し夕飯に備えた。
外は雨が降り始めていた。
軽装のまま出た身に寒さが容赦なく迫ってきた。
そんな夜道も一興。
夫婦でぷるる震えて訪れたのはタイ料理の名店「Dessous」だった。
噂どおり。
伝統的なタイ料理にモダンな感覚を融合させたフュージョンスタイルで、盛り付けも美しくひと口ごとに驚きがあった。
タイ料理の面影はどこにもなかったが味は文句なし。
この日を締めくくるのにもってこいの食事になった。
帰り道も寒さに打ち震え、途中、ウェスティン・ホテルに用もないのに立ち寄って暖をとり、そこを中継地点にしWメルボルンに戻った。
凍てつく夜気のなかを無事生還。
そのまま部屋に帰るのもしのびなく、1階のバーで軽く飲み直した。
こうして4日目の火曜が過ぎ、そして週末にかけ旅はまだまだ続くのだった。