KORANIKATARU

子らに語る時々日記

理想の伴侶

江戸堀の公証役場で用事があった時はほぼ必ず喜作に寄ってネギトロ丼定食を食べる。
昨日初めて蕎麦ではなくうどんをチョイスした。
うどんも程よい歯応え、なかなかいい。
このレベルの飯屋を各駅に一つ配置する。
選挙に出るならこの公約一本で楽勝だ。
喜作を知る者はこぞって一票投じてくれることだろう。

北浜で一昨日も昼食に海鮮丼のうどんセットを食べたばかりであった。
しかし、尊敬する経営者を前にしての食事であり、そのような場合の常として何を食べているのやら何だか味がよく分からない。
話す回路にだけ血が流れ、味覚は閉じている。

あれこれ話を伺ううち中学受験の話となった。
娘さんが今春、名門女子中に進学するという。
受けるところ片っ端から合格し、どこへ進むかは娘さんが選んだ。
父親の勧めとは異なる学校だった。

共学か女子校か、少人数か大人数か。
父親としてその2軸で比較対照してよく考えた方がいいと促し、男親として大人数の共学がいいのではと考えを伝えた。

男子もいるなか女性らしさを見出しつつほどほどに勉強を頑張ればいいし、人数が多ければ進学実績では統制という面でどうしても緩みが出て結果に見劣りもあるだろうが、そんなもの知れた程度の差に過ぎず、多様な同級生がいれば卒業後に幅広い交流の基礎ができる、その方が先々いいのではないか。
少人数の学校はあまりに同質的だろうし、なおかつ女子ばかりとなればそれはもう息が詰まるようなものではないか。
女子ばかりの狭い価値観で、結局はたくまずして競争に明け暮れ、それで果たして幸福になれるものだろうか。

キャリア形成に一生懸命で気付けば婚期が遅れ、子を設ける時期も逸したという人を経営者の立場からたくさん見てきた。
それでも構わないという場合もあるだろが、結論を出すのは多様な価値観に触れ人生観をしっかり揉んでからの方がいいだろう。

それにハードに仕事する男性は得てしてネジが緩めの女性がいい、家に帰ってまでバリバリに締め上げるような人がいたら気が休まりませんよね。
そうでしょう、先生?

娘さんは、そのような父の意見をじっくりと聞いた上で、少人数の女子高に進むことを決意した。
全く正反対の選択をしたわけである。
父は何も口を挟まず娘が出した結論を見守ることに決めた。

正解もないし不正解もない。
論理的に解答に到達できる類の話ではない。
えいっ、何かを踏み越えて行くような決断だけがある。

道中にラジオでツバメの生態について聴いたばかりだった。
春になると、ツバメが戻ってくる。
ほとんどの親ツバメはヒナを育て秋になれば南に向い、生き延びていれば元の場所に戻ってくる。
しかしヒナは巣立った後、親とまみえることはなく異なる場所でつがいとなりヒナを育てる。
それが繰り返されてゆく。

うちは子供が二人とも男子なので、女子に対する父親の眼差しというものは想像はできても実感はできない。
結婚と仕事という要素を別々に分けた上で、それらが整合するよう慎重に考えるという態度が不要である。
女子の場合には、仕事と結婚が常に無矛盾で容易に併存する関係ではないわけだ。

昔ながらの良妻賢母を目指すだけでは心もとなく、かといって男勝りだと良縁に恵まれないかもしれない。
そのような一見二律背反する矛盾とどこかで折り合いをつけるという面倒なことを考えねばならない。
私に娘がいれば、何でもいいのでとにかくうまく行きますように、と神頼みするくらいの気持ちになったことだろう。

では翻って、男性側からすればどんな人が伴侶であればいいのだろうか。
共学か女子高かなど全くどうでもいい観点だし、容姿端麗だの才媛だのあれこれ言っても切りがないし、むしろ的外れかもしれない。
本質的な要点はどのように集約されるだろうか。

当の経営者が仰ったネジが緩めという語はあくまで言葉の綾であり、本当に文字通りそうであるなら危なっかしいことこの上ない。
良妻賢母という言葉自体、いまや虚構の世界に属する代物だ。
一方、男勝りと言えども、モノホンのアマゾネスもごくまれに実在するだろうが大半はもとをただせば普通の女の子である。
どちらも選択の要素になり得ない観点である。

ひとつの仮説だが、まともな結婚生活を送る周囲を見回し抽出すれば絶対的な核として真面目さという要件に行き当たるのではないだろうか。
盲目的で自虐的なまでに四角四面な真面目さといったものではなく知性の萌芽としての陽性の真面目さ。
その真面目さに、酸いも甘いも噛み分け自然と身に付いたような情感が伴えばそれで必要十分条件が整う。

虚飾虚栄や勝ち負け競って無闇矢鱈カッカ沸き立つことからほど遠い、地に足ついた内省のある真面目な女性。
その切り口で見渡し検証すればいいのではないだろうか。
間違っても、見目形や言葉尻だけで判断してはならない。
青二才の君たちへの忠告である。
意見があればいつでも聞こう。

帰途、堂島で用事を済ませ、レオニダスでチョコを買う。
家内への袖の下としてちょうどいい品である。

そのままクルマで家内をピックアップしてプールでひと泳ぎし、塾帰りの二男と合流して駅前のありがた家でB級メニューつついて生ビールを飲む。
今週末、絶好の花見日和となりそうだ。
芦屋西宮在住の友人らがやってくる。
陽性の真面目さと優しい情感の具体例は彼らからも見出すことができるだろう。