ジュリエッタがなくなる。
そう聞いたので、土曜夕刻、家内と西宮北口を訪れた。
元祖オーナーが厨房に立つ頃からちょくちょく通ってきた店である。
気軽に美味しいイタリアンが楽しめて、そのレベルは他の追随を許さない。
だから他のイタリアンには行かなくなった。
何を食べるか迷えばジュリエッタ。
気が向けば夫婦二人で通うお気に入り筆頭の店と言ってよかった。
二男が第一志望の合格を果たしたとき、ささやかお祝いの場に使ったのもこの店であった。
節目節目にジュリエッタに足を運んできた。
そこには数々の思い出が詰まっている。
夕刻、早い時間の到着であったがすでに店は満杯であった。
きめ細かい職人芸で洗練の度を極めつつ、これだけの需要に応え続けるのは並大抵のことではなかっただろう。
限界が来てもやむなし、わたしは素直にそう思った。
徐々に日が落ちる薄暮の時間帯。
薄明かりのグラデーションに染まる往来を夫婦で眺めつつ、名残惜しむように定番の料理をゆっくり味わいワイングラスを傾けた。
あと一週間で、街一番のイタリアンとして皆に深く愛されたジュリエッタが役目を終える。
さらば名店。
折りに触れ、いい店だったと夫婦して思い出すことになるだろう。