ビルの最上階。
窓際の席に並んで座ってぼんやり外を眺める。
小雨が断続的に降る日曜日、街は分厚い雲に覆われくすんで見える。
が、それでも結構味があって見ていて飽きない。
ぽつりぽつり家族の話などしながら男二人、ときおり顔を見合わせるが、視線はあらかた窓の外を向いている。
一歳違いの弟とは高校までほぼ同じ空間同じ時間を生きてきたと言っても過言ではないだろう。
家は小さく部屋も狭かった。
机は横並びで、布団もそう。
文字どおり寝起きともにした間柄である。
大人になって所帯は別になったが、切っても切れない仲であることに変わりはない。
だからこんな風に珍しくともない雨模様の街を前に座っていても間が悪くなることもなくいたって自然体。
もちろん小さい頃はともに活発でじっと座っているなどあり得ないことだった。
虫取りが共通の趣味で、二人してあちこち出かけ、10歳になるかならないかくらいの頃には電車に乗って遠出した。
二人で出かけたもっとも遠い場所は赤目四十八滝だろうか。
同じように、うちの子らも互いに兄弟。
ずっと先の先、二人が横に並んで語らう場面を思い浮かべる。
特に話すでもなく会話が弾む。
そんな実のある寡黙を共有できるのは兄弟だからこそのことだろう。
兄弟水入らずの会話に首突っ込めなくなる日が来るのは寂しいけれど、どちらの息子にも力強い兄弟がいるのだと思えば、こんな心頼もしいことはない。