暮らしのリズムが大きく変わった。
お酒を飲まないからジムから戻って夜もついつい仕事して、路上では居酒屋ではなくカフェに立ち寄るようになり、カフェではパソコンと向き合うので自ずと仕事することになる。
朝は朝で目覚めもよく快調。
仕事も捗るというものである。
つまり、お酒を飲まなくなって時間のあちこちで仕事領域が拡大し、意識も明瞭であるから単に拡大するだけでなく仕事の内容が深まった。
いったい今までの人生は何だったのか。
そう悔いるような気持ちも生じるが、残りの時間は知れている。
無為を振り返ったところで二重に無為でしかないから、心の声を息子に伝え、あとは少しでも良いように生きるしかない。
日曜午前の業務を無事に終え、ぶったまげるほどの熱暑のなかを駅まで歩き、目には目を、暑さには熱さということで大汗をかきながらラーメン大をすすった。
空腹が癒え、午前の仕事をまとめておこうとおむかえのドトールへと移り涼みつつ業務をこなした。
で、家へと戻ってジムへと向かうのであるから、我ながら思う。
ああ、わたしはとっても真面目で勤勉な人間なのだった。
若い頃に気づいていれば、もっとマシな人物になれていたのではないだろうか。
が、自分を取り違えてしまった結果は取り返しつかず、穏やかならざる心の声は息子にだけ伝え、あとは余生を少しでもマシに生きるしかないのだった。
ジムを終えて夕刻。
通り雨が降ったのだろう。
自転車に雨の雫がしたたって、そこら空気に夏の匂いが漂っていた。
近頃、暑すぎて風情ある夏の匂いさえ消し飛んで、これはもう夏とは別の何か、暑は夏いと言葉を失うしかなかったから、夏という輝かしい季節を再認識する上で貴重な瞬間であった。
束の間、懐かしいような夏の匂いを胸いっぱい吸い込んで家へと戻り、女房に隠れてアイスを食べて休日の余韻にひたった。
こんな感じで、ささやかな人生がゆっくりゆっくり閉じていく。
蝉よりは遥かにひっそり、自分のペースで残り時間を謳歌して、あとはすべて息子に託せばいいから思い残すことなど何もない。