試しに乗ってみようと思い、朝の足にトラムを使った。
結構混み合っていてあまり快適なものではなかった。
一駅で目的地に到着したがそれで十分だった。
そこからディーン・ビレッジを目指した。
冷涼な空気を全身に浴びるようにして歩き、大阪では朝から容赦のない猛暑に晒されていたから、修羅場を脱したといった安らぎを覚えた。
ちらほらと観光客らしき人影が見える方へと進めばディーン・ビレッジだった。
緑が豊かに生い茂り小川がせせらぎ、こじんまりと佇む建物はどれも歴史を感じさせた。
人が身を置く場として最良。
そう思えた。
だからだろう、自ずと心が開いてそこらを歩くだけでどこまでも心が満たされた。
ウォーター・オブ・リースのせせらぎに導かれるまま小道を歩いた。
雨上がりで路面が濡れ、だからいっそう静けさが際立った。
しっとりとした空気も手伝って、幸福感がどんどこ全身に沁み入って、内側に巣食ういろいろなものが洗い流されていった。
まもなく巨大な植物園へと行き着いた。
四方を色鮮やかな花々に囲まれて風が優しくそよいで頬を撫で、更にいっそう癒やされた。
多くは不要。
幸福を構成する要素は実にシンプルなのだった。
温泉につかれば、つい言葉が漏れる。
「ああ、生き返る〜」
それよりはるかによりよく生き返った。
遠路を押してやってきて、ほんとうによかった。


