夕刻、ゲリラ豪雨に見舞われた。
改札付近は雨をしのいで立ち尽くす帰宅者で溢れ返っていた。
ぎゅうぎゅう詰めといった様相で足の踏み場もなく立ち往生していると家内から電話がかかってきた。
いま、どこ?
駅だと答えるや否や「迎えにいく」と言ってすぐ電話が切れた。
彼氏にしたい女房ナンバーワンの座はやはり不動だった。
豪雨によって冠水し始めたロータリーにまもなくクルマが横付けされた。
間断なく雷鳴が轟くなかわたしはクルマに乗り込んだ。
外界とは裏腹。
家のなかは平穏そのものだった。
まず風呂に入って、湯上がりに女房の手料理を味わった。
お腹が満ちたところでこの日の本題。
来年の旅行についてあれやこれやと話し合った。
パリを拠点にしよう。
そう意見が一致したからシンガポール航空のサイトで行きと帰りの航空券を早速買って座席も決めた。
切符を買えばもう旅は我が物となったも同然だった。
その未来が現在までの道筋をくっきり照らし、敷き詰められた日常のすべてが生気を帯びる。
旅が生きがい。
子育てを終えてそうなった。
夫婦で共通しているから話が早い。
今日も明日も明後日も。
暇があれば旅に出る。
そんな感じであるから、まあ楽しい。
外では依然として激しい雨が降り続いていた。
心からわたしは思った。
女房がいてほんとうに助かった。