少しずつ寒くなっていく。
そう言われているがさほどでもない。
秋が深まったかのような師走序盤。
昼過ぎに事務所を出て新規の事業所を訪問した。
タコちゃんの紹介だった。
応接室で院長と話をし、その隣には奥さんが座っていた。
話の流れで大阪星光の話題になって、なんと奥さんが33期のK君の姉だと分かった。
わたしは驚きのあまり椅子から転げ落ちそうになった。
腕っぷしが強く戦闘的だったK君は医師になって温厚篤実な人格者に変貌した。
彼のなかで沸き立っていた激しい戦意は根こそぎまるごと医師という職業に注がれ、あとにはふんわり優しい心根だけが残ったのだった。
奥さんの顔をよくよく見ればその顔立ちにK君の面影がなくはなく、だんだん眼前にK君がいるような気持ちになって懐かしさが込み上げてきた。
なんて世間は狭いのだろう。
そんな感想を漏らすのはタコちゃんの世界の側だろう。
わたしが本来接する世界には人っ子一人、星光生もいなければ医師もいない。
たまたま33期と関わりができ、思いがけずわたしはある種の「偏り」のなかに包摂されたに過ぎないのだった。
だからこそ芯から理解できる。
狭く詰め合わさったその「偏り」や恐るべし。
そこから市内を北上し西大橋のクリニックにて最終の業務を終え午後6時の予約時間ぴったりにJR尼崎のマッサージ屋を訪れた。
はじめて担当してくれる施術者であったが、ストレッチなどもしてくれすっかりほぐれ、疲労が癒えた。
帰宅すると家内がジムから戻ってきたところだった。
家内の2万語がはじまった。
ジムの更衣室でなんと偶然、西大和ママに出くわし長話になったという。
息子が阪医に通う母であり、積もる話は小一時間にも及んだ。
家内は数日前、京医に通う西大和ママとも食事して会っていた。
まあ家内もかなり「偏り」の世界にどっぷりつかっているということである。
それもこれも中学受験を経た結果。
気づけば周囲の皆が頑張って、世界がこんなにも偏ってしまったのだった。