夕刻帰宅し武庫川に出た。
小雨がぱらついていたが構わず走り始めた。
雨とともに吹き始めた風がカラダの熱を冷まして心地いい。
小刻みに呼吸を重ね、意識的に身中の澱みを洗い流していった。
折り返したところで本降りとなった。
ずぶ濡れになる感覚が新鮮に感じられ雨に降られるがまま身を任せた。
内省が更に深まっていった。
夕闇に閃光が走ってまもなく雷鳴が轟いた。
この日の昼、ブルーインパルスを見かけた。
5機で構成された隊列が上空を勢いよく横切る姿が眼前によみがえった。
日頃そんなものはお見かけしない。
数日後に迫る万博用の出し物に違いなかった。
自身の周辺には何らの兆しも見られないが、ブルーインパルスが空翔けるのであるから、大阪は華やぎの渦中にあるのかもしれなかった。
東京ほどではないにせよ大阪のホテルも宿泊費が高騰しつつあると聞く。
蚊帳の外にあってはじめて自分の居場所についての確信が強くなる。
カラダで風を受け雨に打たれ、ただ呼吸するだけの存在となって走る。
そんな一歩一歩の中にこそ確かな実感があった。
外の世界がざわつけばざわつくほど、内なる静けさが際立ってくる。
ほぼ忘我。
そんな境地に至って、わたしは雨の中に身を溶かしていった。