顧問先の食事会に招かれた。
院長をブレーンが囲む。
弁護士、税理士、そしてわたし。
皆でクリニックの歴史を振り返った。
ここ一番、それぞれが力を出し合い、いろいろあったが乗り越えてきた。
日々の断片だけではその実像は窺い知れない。
長いスパンで捉えてはじめて。
果たしてきた役割が明確な輪郭をもって浮き彫りとなる。
その軌跡をたどり直すと実に感慨深い。
そして、これからも。
連携を取りつつ協力関係が継続していく。
ふと気づいた。
全員が「雇われる」といった立場とは無縁で、それぞれが一国一城の主だった。
忙しいという前向きで明るい悲鳴はあっても、前途を憂う陰気な悲嘆は見当たらない。
医師は別格として、就くとするなら公認会計士がいちばんいいのでは。
そんな話になった。
弁護士はストレスの負荷が桁外れ。
エースの出番だらけで後ろに引っ込んでなどいられないから疲弊の度が凄まじい。
ゲインはデカいが幾つになっても始業は朝4時という暮らしが続く。
税理士は仕事が細かく雨あられのごとく各種用事が降ってくる。
が、作業部分をスタッフが担えば負荷は大幅に軽減されて、顧問料が右肩上がりに増えていく。
なんて素敵な職業なのだと結論が出かかったところで、税理士は言うのだった。
人生をやり直すとすれば、間違いなく公認会計士の一択だろう。
公認会計士だと仕事先の助力が大きくフィーもいい。
ほぼ最終といった段階まで相手が仕事を仕上げてくれるのであるから、例えるならダルマに目を入れるような業務と言える。
取得するのはめちゃくちゃ難しいが、ダルマに目を入れるだけなら誰でもできる。
つまり取ってしまえば、天下泰平という話ではないか。
ああ、アキオ。
大阪星光33期で公認会計士と言えば清水章夫。
誰の頭にもまず彼の名前が浮かぶだろう。
宵は深まり各種専門家の矜持が交錯する宴は公認会計士最強論へと行き着いた。
わたしの脳裏にはダルマに目を入れるアキオの姿が浮かび、久々に口にしたお酒も手伝って、胸の奥になんともあたたかな愉悦が広がっていった。