こちらでは珍しい。
小雪がぱらついた。
美容クリニックの予約があるからと言って一足先に家内はクルマで出かけていた。
わたしは雪のなか自転車でジムへと向かった。
子どもは風の子。
童心に返ったからか、寒いとは感じなかった。
行きはよいよい、であった。
40分間、泳いで快適。
ジャグジーに入って土曜午後だからどこかからの連絡を気にすることもない。
わたしはのびのびくつろいだ。
続いてマシンエリアに移り筋肉に負荷をかけていった。
身中に力がみなぎって、この感じがめちゃくちゃ気持ちがいい。
案の定、サウナは混み合っていた。
こうも寒いと暖を取るためだけにジムにやってくる方々も少なくないようである。
ゴミゴミしていようが意に介さない。
わたしはゆうゆうとサウナで過ごし、ゆったりとした呼吸のペースを保った。
この歳になって、わたしはほんとうに基本的なことに気がついた。
ゆったりとした気持ちで過ごすこと。
これこそより良く生きる極意だとこのところ痛感している。
日頃あれやこれや仕事に追われ、携帯の着信に常に気を取られ、せわしない。
これはまさに命を削られているも同然で、そんな状況に適応してしまえば命を自ら積極的に毀損するような話なのだった。
だからこのところ、ゆったりとするよう心がけている。
一休さんも言っていた。
「あわてない、あわてない。ひと休み、ひと休み」
すぐに反応しようとするのではなく、カフェでひと呼吸入れてから腰を上げるくらいでちょうどいい。
それくらいのペースで充分対応が果たせて、その方が行動の質があがる。
そんなゆったり感の醸成にジムなど格好である。
特に混み合ったプールなど、自らのペースをどこまで我が物顔で貫けるかが試されて、実にいいトレーニングになる。
慌てず騒がず、ゆったり過ごす。
第一、もう大きな区切りはついて、もうあくせくせずともこの先食べていけるだろう。
だから今後もより一層ゆったり過ごそうと思いながらマッサージチェアにカラダをあずけ、汗もひいたところでジムを引き上げた。
外は一段と冷え込みの度を増していた。
たちまちのうちカラダから熱が奪われ、寒さが苦しいと感じられるレベルにまで至った。
必死に自転車をこぐが、寒いというより痺れる。
これはやばいと思って道中のコンビニに入って暖を取り、カラダに熱を補給した。
そのように必死のパッチ、命からがら寒気を振り切り家へと逃げ込んだ。
同じくジムを終えた家内が家に戻っていて、家は楽園のような暖かさに満ちていた。
床暖がよく効くガスヒーターの前がここ最近の家内の定位置になっている。
暖かい場所に人は引き寄せられる。
荷物を置くなりわたしは楽園の中心地へと駆け寄った。