場所は阪急うめだ本店7階、商品券売り場。
隣で商品券を購入しようとしていた男性が、店員に対して理不尽な物言いを繰り返していた。
「え、カードで払えないの? なんで?」
「え、明日届かないの? 意味わからん」
「え、千円券? 一万円券ないの? なんで?」
声を荒げるわけではないが、あからさまに小馬鹿にしたような言い方で、しまいには、懸命に対応している店員の仕事ぶりにまで、こう言った。
「そんな仕事でいいの? なにそれ?」
身なりはいいが、中身はちょっと。
実家が小商いをしていて、その二代目といった風に思えた。
人の本質は力関係のなかで鮮明に浮き彫りとなる。
目の前の立場の弱い相手には無遠慮に迫り、隣で冷ややかに見つめるわたしには目を合わせようともしなかった。
で、思い出したのだった。
ああ、いたな、こういう手合い。
下に見れば嵩にかかり、上と見ればお追従を躊躇わない。
うちの息子らがちびっ子だった頃のこと。
大人と子どもという関係性のなか、彼らはかなり粗末に雑に扱われたようだった。
もちろん、うちの息子らもサルに見えてバカではなかったから、そんな人物をもお手本にして多くを学んだ。
きちんと人を大事にする。
そうでなければ男ではない。
だからあいつは男じゃない。
子どもながらそんな結論を導いていた二人の会話が懐かしい。
立場や状況で態度を変えない。
誰にでも優しい男子になった二人を思って、またひさびさ、東京にでも行こうとの気持ちが湧き上がった。