KORANIKATARU

子らに語る時々日記

誕生日に暴力について考える


7月10日で44歳となった。
惑い憂うばかりの40代半ばである。

明け方、レギュラーが150円を突破したガソリン価格の表示を見つつセルフ給油する。
たまに飲みに出かける以外は仕事だけする44歳近況である。

暇でする事がなく倦んでだるい、このように生あくびかみ殺す日々などこの先訪れることはないという気がする。
実は学生時代に持ち暇を完全費消し、もうどこにも残余がないということなのだろう。
仕事であれ何であれ、慌ただしく瞬く間に時間が過ぎてゆく。


ちょうど誕生日、iPhone4の調子が悪くなり通話ができなくなった。
書類屋にとっては致命的だ。
この際である、家内のも合わせてiPhone5に機種変更し、これもついでに子らにはiPhone4sをあてがった。

たったこれだけの手続きに3時間を費やしてしまった。
下町のソフトバンクは昼間なのにごった返しているのであった。
どこかのちびっ子が泣いて暴れて、分割払いの決済が下りず店員は罵られ、お爺さんやお婆さんが機種の操作に頭を抱え、草履履きのおばさんらが未払いの料金を払いに列に並び、お兄さんが何やこの600円は?と店員に明細つきつけて詰め寄る。

道歩きながらするだけでなく、授業中もLINEに興じる女子中学生らに眉をひそめるご婦人の声を多数聞くが、我が家の小僧らはもっとましな用途でiPhoneを活用するだろう。
フィルタリングの設定もしないでおこう。
有害情報をカットするのに全身全霊、血眼必死のご婦人には理解不能な暴挙かもしれない。

しかし、所詮、この身が発端となって、呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーんと飛び出した二人のことである。

誰もが通ってくる道である。
私も、あなたも通ってきた。
子らも当然通ってくる。
危ないことなど何かあっただろうか。
黙って見守るだけのことだろう。


先日、仕事しつつ耳にしたニュースに凍りついた。

阪神高速湾岸線中島インター付近で男性が飛び降りた。
一カ月後、神戸空港沖合10キロの地点で遺体が漁師によって発見される。

借金のトラブルが原因でクルマに軟禁され、裸足にされた上で連れ回され、挙句、金主らが見守るなか「自ら」高速高架から2月極寒、真夜中の海に向かって飛び込んだのだという。
当の男性は、この出来事の以前に、借金の清算のため遺書などを書かされたと知人に漏らしていた。

たいへんな恐怖であったに違いない。

恐怖は何もこことは別のどこか遠いところにあるのではなく、日常の生活と地続き身近な場所に迫っている。
普段気付かないだけのことだ。

何か付け入る隙を見い出しては、そこをこじあけ、暴力が侵入してくる。
暴力に晒される立場となってからでは手遅れとなりかねない。

付け入る隙を与えない。
そのように心しなければならない。


その昔、夏が大嫌いであった。
汗で衣服がまとわりつき、空気が膨張するためか呼吸も息苦しく、セミがやかましい。

しかし、いま、夏に心躍る。
ギラギラ照りつける陽射し、路面の照り返し、躍動する生命の息吹、はじける水しぶき、何もかもに陶然となる。

子ができたからだ。
輝き眩しいほどの旅の思い出が、すべての夏を彩り鮮やかな色調で覆い尽くす。

さあ、今年も間もなく、出かけよう。
心浮き立つ。


セブンイレブンでくじを引いて下さいとレジで言われる。
いや、いいですと固辞する。

くじで当たる程度のものなど自分で買えるし、くじ引く手間が煩わしい。
店員にも厄介かけたくない。

先日、天満橋の天丼屋で昼食を取っていた。
昼時なので店は大混雑している。
しかし経費節減のためか、接客は女子1人で対応し、これはまるで千手観音でなければ務まらない過酷さであった。
注文を聞き、お膳を運び、後片付けし、レジを打つ。

すでに食べ終わり無駄話に興じる学生風情が、「あ、お水下さい」とぶっきらぼうに女子店員に命じる。
そこの学生、因果応報という言葉もある、君、仕事でえらい眼みるよ。
きっとそうに違いない、苦々しく確信しエビ天を噛み砕く。


NHKの未解決事件シリーズ「尼崎連続不審死事件」を観る。
首謀の人物は、尼崎の人間であるが、そのような人種は関西界隈見渡せばどこにでもいる。
大阪だけでも少なく見積もって千人はいるに違いない。

我が強く攻撃的で、相手の寄って立つ基盤を我流のロジックミサイルで執念深く執拗に打ち砕く。
金銭的なパワーで優位に立ち、背景に軍事力などがあるようちらつかせ相手の足を止める。

無名の存在であれば標的になることはないが、一旦関わると、そこを取っ手にされタダでは離れない。

この先、どんな場合であれ生け贄とされることがないよう、君たちも必ず観てその構造を心に留めておかねばならない。

しかしなぜ、あそこまで放置されたのだろうか。
尼崎という特殊事情と力のメカニズムが働いたのだろうか。

兵庫県警ではなく、大阪府警のシマであれば、と考えてみる。
泣く子も黙る大阪府警。
さる書類屋業界においては府警出身の先生方が多く、数々府警の武勇伝を耳にしてきた。
井岡も亀田も強いが、大阪では大阪府警が一番強い。

誰にも助けられずなすがまま恐怖に晒され、そして無惨な末路を辿った命がいくつもあったこと、それが隣町で起っていたことを思うと暗澹となる。
我々が文字通り矢や鉄砲もって武装できる訳もない。
このような事件が二度と起らぬよう、むきだしの暴力に真っ向対峙する我らが警察であって欲しいと切に願うばかりである。