KORANIKATARU

子らに語る時々日記

やから、になりかかった紳士

雨の中、家路を急ぐ。雨脚がどんどん強くなる。久々に電車を利用すればこうだ。クルマで動けば良かった。トートバックのなかの書類が濡れぬようカラダでかばうようにして歩く。

途中、グリコ森永事件で一躍有名となったファミリーマートに立ち寄る。

ビールを3缶、おつまみを1包買った。

家に戻り、あれやこれや荷物を整理しつつ、着替えて、風呂を沸かし、お風呂で飲む1本をよりわけ、残りのビールを冷蔵庫に入れる。

と、そこで気づく。買ったはずのつまみがない。

まあいいかと思いつつレシートを見ると、そのつまみは410円と高額だ。

とても水に流せる額ではない。

雨の中、もと来た道を戻って、コンビニに駆け込む。

「買った商品入ってなかったで、ちゃんとしてや」とイライラ感そのままにぶっきらぼうに女子店員に伝える。

責任者らしき男性店員が現れ、申し訳ありませんと、私がレシートで示した商品をすぐさま私に差し出し頭を下げる。

そのとき、女子店員が言った。

「わたしは、間違いなくその商品を袋に入れてお渡ししています」

自信に満ちている。

間違いない?と私は確認する。

女子店員は力強くうなづく。

もう一度、確かめに家に戻る。もしなかったら、電話するで。

こう伝えると、男性店員は、そのときはお宅までお届けしますと言った。

舞台変わって、再び家。

私が辿ったはずの地点を隈無く調べはじめたその瞬間、風呂場入り口の洗濯機の上に、つまみ、は居た。

風呂でビール一本飲む際、食べるかもと無意識のうちに取り分けたのだろうが、当の本人には全くその記憶がない。

コンビニに電話せねばならない。

男性店員が恐縮したように電話に出る。

あったよ、と伝える。女子店員に謝っといてね。

男性店員はほっとしたようだ。良かったですね、と彼は言った。

良かった、と私も答える。

本当につまみが見つかって良かった。買ったはずのものがない、このはぐらされ感は人を荒ませる。

穏やかな人間にもどり、風呂に入ってビールをゴクリ。雨脚は強さを増すが、とてもナイスな感じで心は静かさを取り戻していった。