夕飯を食べつつ夫婦で意見が一致する。
ことが子の話になると話題として飽きが来ずいつまでもああだこうだと話し続けられる。
子について話す以上に楽しく盛り上がれることなどない。
そうだそうだと何度も同じ話題を反芻していると長男が帰ってきた。
夕飯に合流した後、彼はリビングで野球中継を見始めた。
まもなく彼の悲鳴がリビングに響き渡った。
スリーランを被弾しタイガースはジャイアンツに更に引き離された。
言わんこっちゃない。
精神衛生上、野球は当分目にしないほうがいいとあれだけ言ったのに。
わたしたちもソファに腰掛ける。
木っ端微塵となるわれらがタイガースの様子が画面に映し出されている。
長男が言う。
これでは甲子園球場に行く気がしない。
先日友人は観戦に訪れたが、ひどい野次が聞こえるばかり、後味最悪であり金輪際野球は観に行かないと決めた。
わたしも同意する。
縦縞装束の神の子らがするズバ抜けたプレーを目にできるから、甲子園球場には行く価値がある。
もしそこで、無力に晒され棒立ちの、神の子どころかその成れの果て、でくのぼうみたいない竹の子の衆を目にするのだとしたら、こんな痛ましいことはない。
タイガースが負け続け、す・またん!はとても暗い大阪の朝を連日告げる。
大阪人のプライドはズタズタで、やはりダメなのだという負け犬根性がのっそりのっそり息を吹き返しはじめた。
大阪中を覆う意気消沈が暗黒時代をたぐり寄せるまであと一歩というところまできている。
この流れに巻き込まれないためには、やはりどうしても野球から関心を逸らすことであろう。
タイガースについては禁句とし夫婦は子の話題で盛り上がればいいのだし、子らは部活や学業の話に興じればいい。
それが身のため。
これ以上タイガースに注目し続ければ、とんだとばっちり、こっちに負け癖、運の尽きが押し寄せて来かねない。