長く一人で仕事してきた。
それが自分に合ったスタイルであり、それに気づいてからは意識的に「ひとり」である状況を作って仕事に対峙した。
早朝から始動するというのもその一環と言えた。
誰もが寝静まる時間帯、間違いなくわたしは一人であった。
事務所でもたいていの時間は自室にこもって過ごしてきた。
が、先日のこと。
スタッフの業務スペースにたまたま混ざって仕事する機会があった。
全員が見渡せ、その様子がライブでこちらに伝わってくる。
うちの事務所はとても忙しい。
その活気にシンクロし、そこにいるだけで高揚するような気分が味わえた。
事務所内をスタッフが行き交い、声も行き交い、つられてわたしも声を出し、そこに生じる一体感も心地いい。
いつの間にか増えた女子スタッフらは一様に優秀で、男子スタッフたちは相変わらずガッツがあってタフで、その両輪がうまく噛み合い業務がどんどん消化されてゆく。
ああ、なるほど。
皆でわいわい。
そんな雰囲気で取り組めるのであれば、仕事も楽しいと感じられる。
それでわたしの仕事も捗った。
だから思ったのだった。
たまにはこの一角で業務をこなそう。
もちろん、わたしも立場をわきまえている。
長くそこに居座れば、まわりは気詰まりだろう。
いい雰囲気が変質してしまわぬよう、1〜2時間もすれば席を立たねばならない。
自室に戻ってしみじみと思った。
この歳になって新たな発見。
人がいてこそ救われる。
たまには自分を覆う殻を取っ払い、人の輪の中へと身を投じるべきなのだ。
そして、それではじめて深く理解できることがある。
友だちに恵まれ、お客さんに恵まれ、女房に恵まれ、息子に恵まれ、親兄弟に恵まれ、そしてわたしはスタッフにも恵まれた。
よくよく考えれば「ひとり」であるなど思慮の浅い了見違いであって、いつだってわたしは分厚く賑々しい人の輪に取り巻かれているのだった。
それを忘れぬよう、時々は皆に混ざることが欠かせない。