夕飯は寿司。
家内が調べ予約してくれていた。
東京の寿司は高く、リーズナブルな店はすでに予約でいっぱいだった。
そんな状況のなか、口コミがよく一人2万円以内で食べられる店を家内が探し出してくれたのだった。
ホテルの前からタクシーに乗りニュー新橋ビルの前で降りた。
二男からは先に着いたとのメッセージが入っていた。
場所は2階でエスカレータをあがって驚いた。
ひと目で怪しいと分かる店が群居して、まさに魔界とも言えるような様相を呈していた。
ああ、東京は奥が深い。
フロアの端っこにある店に辿り着くと二男が店の前で待っていた。
無事、魔界を通り抜けた者同士、やあと手を上げ暖簾をくぐった。
長男とは予定が合わなかった。
連休中、友人と過ごすとのことだった。
中3の冬、彼はカナダに留学した。
そこで大勢の友人ができ、いまも交流が継続している。
そのなか特に仲の良かったメンバーが来日するとのことだったから、友人との予定を優先させるのは当然の話と言えた。
長男にせよ二男にせよ留学時に得た友だち関係を良好に維持している。
留学した甲斐があるというものであり、親としてとても嬉しい。
秘境にあって寿司はなかなかのレベルだった。
二男は先日、運転免許合宿で仲良くなった友だちと一緒に食事したとのことだった。
その友人は東大理3の男子でいまアメリカに留学している。
このたび一時帰国した機会に会って近況を交換し、その志の高い話にわたしたち夫婦は寿司を頬張りつつ耳を傾けた。
今度二人でニューヨークで遊ぶ。
二男がそう言うと間髪入れず家内は言った。
あたしも行く。
わたしも続けた。
おれも行く。
家内がビール1本飲んだだけで、わたしは飲まず筋トレしたとのことで二男も飲まなかった。
それでお代は3人で60,500円。
まあやはり寿司は高い食べ物なのだった。
新橋駅で二男を見送り、わたしたちはタクシーに乗り込んだ。
東京タワーが見える道を通ってください。
家内がそう言うと運転手は気を利かせて東京タワーの真下へとクルマを向けてくれた。
息子たちが東京で暮らし、時々、東京にやってくる。
雨靄のなか東京タワーが暖色系の光を放ち、それがひときわ美しく見えた。