筋肉男子らの帰省を前に家内の料理づくりが本格化し始めた。
クリスマスの日の朝、開店と同時に家内は西宮阪急、ガーデンズのイズミヤ、パル・ヤマトをはしごして回った。
肉と野菜をどっさり買い込み、そして早速仕込みにかかった。
その間、息子らのため寝具を整えることも忘れない。
昼過ぎ、ズームでの業務が終わるのを待って声がかかり、わたしは助手席に乗せられた。
行き先は野田阪神。
新鮮さでここの右に出る場所はない。
だからわたしたちにとって食材調達の最重要拠点とも言えた。
家内はいつだってたこやの女将へのおみやげを欠かさない。
結局おみやげを返されるから二人でおみやげを応酬し合っているようなものであり、掛け合い漫才のようなやりとりを目にし笑って、そして、鮭のでかい切り身や牡蠣やさわらなどいつものとおりわたしは結局は大ぶりとなる荷を持たされた。
続いて川繁へと足を運び、焼きあがったばかりのうなぎ特大を焼き上がった端から包んでもらった。
このほか年末に向け丹波から猪鍋、高知からクエ鍋、日生から岩牡蠣がわが家を目指す道中にあってまもなく勢揃いする。
この正月もうちの食卓はたいへんなにぎわいを見せることになるだろう。
買い物を終えた後ももちろん家内は休まない。
ずっと台所に立ち、おでんを煮込み肉を焼き、単に焼くだけではなく様々な味付けをこらし、天満橋の昆布屋で仕入れた昆布で出汁を炊き、これはもう一般主婦の領域には収まりきらない所業と言えた。
で、思ったのだった。
クリスマスの午後、その人の真の姿が明らかとなる。
家内にとってはキッチンが真正な居場所であり、愛する息子らへせっせと料理を作るのがその本性なのだった。
先日、Wホテルのプールで家内と泳いでいるとビキニ姿の女子らがやってきて写真撮影に興じ始めた。
もちろんロビーラウンジには単なるケーキを前後左右真下斜め下からカメラで舐め回すような女子らがいて、映える写真を求める群れはいまや水陸を問わず出没するのだと痛感させられた。
中が空っぽであればこそ空洞を飾り立てる補完材料として「映え」が必要で、しかし、そんな枝葉末節などどれだけかき集めても、幹にはならず枝葉のままに過ぎず、だからホンモノ女子の姿をみれば枝葉末節など顔色を失くして枝葉は枝葉らしく隅の隅へと追いやられていくだけの話だろう。
精魂込めた家内の料理づくりを目の当たりにして、わたしはこのクリスマスの一場面を筋肉男子らに向け必ず日記に残さねばと思った。