4日の土曜日も二男は大阪星光のメンバーと過ごした。
人気のラーメン屋に並びサウナに入り居酒屋にてビールで乾杯し、丸一日楽しんで日曜の朝、東京へと帰っていった。
息子の背を見送って、これでようやく家内は年末年始のお世話役から解き放たれた。
正月休みも残すところこの一日のみ。
買い物でもしようと家内に誘われ、であれば混み合わない場所がいいとわたしが希望を述べ、行き先が神戸に決まった。
クルマで走って半時間。
ちょうど10時に神戸阪急に到着した。
開店と同時だったからガラ空きでまずはブルーボトルコーヒーでゆっくりお茶して、それからどれどれと服や靴を選んでまわった。
日曜なのに大丈夫なのか。
こちらが心配になるほど空いていた。
が、人がいないと品をじっくり選定できる。
試着嫌いなわたしでもまるで家でくつろぐみたいにあれこれ着ては脱ぎ、結果買い物がスムーズにはかどった。
昔ならいちいち服の値札が気になって、ひとつ買うのでもまさに文字通り身を切るような思いとなった。
しかしさすがにもう55歳。
服の値段に目もくれないのだからすっかり大人になったものである。
そのように買い物を楽しんでいると二男から富士山の画像が送られてきた。
時刻はまもなく昼になろうとしていた。
ここで一休み。
家内が選んだ店で昼食をとることにした。
年末から晴天が続きこの日も素晴らしい天気に恵まれた。
海と山が近く街中なのに自然が間近に迫って、店へと向かって往来を歩くだけでも気持ちが弾んで、行き着いた寿司屋は当たりの店だった。
凝りに凝った寿司にたいそう感心させられ、目で見て美しく、説明を聞いて楽しく、食べて美味しい。
そんな三拍子が揃う店はそうそうない。
三宮という街が提供する食のレベルの高さを今更ながらわたしたちは思い知らされた。
西宮に住んでいるのに、隣町の神戸でのんびり買い物するのははじめてのことだった。
ぶらり歩いて楽しい街が近くにあるのにこれまで活用せずに実にもったいないことをした。
これからはもっと神戸で遊ぼう。
夫婦でそう決めた。
買い物してごはんを食べてゆっくりと晩年を過ごすのにうってつけの街だと思えた。
残りの買い物を終え家に帰ると家内が言った。
「明日から月曜日、なんかちょっとヤだね」
気鬱なことでもあるのかと聞いたところ、明日の朝はジムに行くと決めていて、ひさびさだからそれで少しばかり気が重いのだという。
そりゃ憂鬱だね。
とわたしは応じ、家内の言葉によって休暇最終日に忍び寄る憂愁の影が一気に薄らいでいくのに気がついた。
そうそう、気を病んだところで真相はその程度のこと。
いつものちょっとしたルーティンが始まるに過ぎないのだった。
なんかちょっとヤだねを大仰に捉える針小棒大の罠から抜け出して、わたしはとても静か穏やかに過ぎゆく9連休の背を見送った。