夕飯は焼肉にしよう。
ヨガのレッスンを受け終えた家内から電話があった。
わたしもジムでかなりカラダを追い込んでいたから、両手を上げて賛同し、すぐに焼肉じゅん亭に電話を入れた。
幸い、早い時間なら席を確保できるとのことだった。
ジャージのままクルマに乗り込み、駅のロータリー前で家内の到着を待った。
土曜の夕刻、電車を乗り降りする人影をぼんやり眺めながら、以前訪れたのはいつだったか日記を調べた。
奇遇なことにはじめて焼肉じゅん亭を訪れたのは二年前のことでこの日と同じ、1月の第三土曜日だった。
不思議なものである。
1月の第三土曜は段ボールなど資源ごみの日だから、その日の朝もゴミ出しを行なったのだろうが日記にそこまでの記載はなかった。
が、ジムで泳いで筋トレしたのはその日もまったく同じだった。
まもなく駅の改札をくぐる家内の姿が視界に入った。
まっすぐ家内がやってきて助手席に乗り込んだ。
わたしはアクセルを踏み込み勢いをつけるかのようにロータリーをぐるりとまわってクルマを武庫之荘へと走らせた。
夕刻の開店と同時に店に入り、和牛ハラミ3種、黒タンのええとこ、黒タンのタンツラ厚切りとおすすめどころを次々注文していった。
家内はビールに続いて赤ワインのグラスを傾け、わたしは白飯大盛りを手に肉を頬張った。
世に焼肉ほどおいしいものはない。
網の上でこんがりと焼けていく肉に注ぐわたしの目は喜悦に輝いていたことだろう。
そのように夫婦でスタミナを補給して交わす話題はちょうどいまの時節であるから中学受験のことになった。
吉と出るか凶と出るか。
息を呑んで過ごす日々が無事に終わったあと数日は全く動けなかった。
長男のときも二男のときも。
家内はそう言った。
料理を作る気力が湧かず、一週間ほど食事はすべて店屋物で済ませたとのことだった。
渦中では気づかなかったが、抜け殻になるほどの入魂が必要だったということだろう。
そんな日々は遠く過ぎ去って、いまはこうして笑顔で焼肉を食べることができる。
まあお互いよく頑張ってきた、そういうことなのだろう。
では第二弾。
ヒレと焼きしゃぶをわたしたちは追加し、宴は第三弾へと続いていった。