夕刻、天六にある玉一で二男と待ち合わせた。
なぜ玉一を選んだのか。
天六には美味しい店が山ほどもあるのに。
家内は首をかしげた。
が、理由があった。
かつて玉一は名店として知れ渡っていた。
その頃、若かりし家内とともに足を運んだ。
生まれたばかりの長男はバギーに乗って参加した。
長男にしたことは二男にもする。
今回、二男を連れて、これでようやく玉一での食事が完結する。
そう思ったのだった。
だから二男との会話は当時を振り返るエピソードから始まった。
若き夫婦の通り相場と言えるだろう。
経済的に楽ではない船出だった。
が、長男を授かって少しずつよくなる兆しが生まれた。
そして二男がやってきた。
不思議なことにいろいろなことが一気にうまく回り始めた。
そうした節目。
これから浮上していくのかもしれない。
おそらくたぶん。
そんなほろ苦くも甘酸っぱい季節を象徴する思い出の店が玉一なのだった。
今回、二男は帰省したがとんぼ返りになる。
まず先、66期の友人らと遊び、うちの親父に会いゴルフクラブをもらい、従兄と映画をみて飯を食った。
この日は大阪星光の大先輩、33期の貴治先生のもとを訪ね歯をケアしてもらい、そしてその足で、これまた33期で父親でもある、わたしとの待ち合わせに臨んだのだった。
血は争えずともにそれぞれ銭湯に寄っての風呂上がり。
実に生ビールがうまい。
まもなく、二男が焼酎と瓶ビールを注文した。
焼酎をビールで割って飲むのがソウル流だとのことで、二男が作るのに任せて二人でそのようにしてガブガブ飲んだ。
食後はあらかじめ予約してあったマッサージ屋「もみっしゅ」にて全身もみほぐしと足つぼ計90分の施術を受けた。
焼酎ビールがてきめんで二人ともすやすや寝入った。
施術を終え会計の際、店のオーナーに声を掛けられた。
息子さんと食事してマッサージですか。
いいですね。
わたしはふと二男に聞いた話を思い出した。
先日二男は早稲田登山部の友人と富士山に登った。
ご来光を目にし、思わず感涙したという。
産声を耳にし二十有余年。
こんな日が来るなんて。
ご来光レベルの感涙ものと言っていいだろう。