KORANIKATARU

子らに語る時々日記

誕生日メッセージ

今日、42歳の誕生日。日曜日だが、例のごとく朝から仕事していた。
ああ、せっかくの日曜日やから遊びたい~というような衝動が生じることはない。
個人自営業だから遊ぼうと思えば、曜日選ばず平日だって遊べるので、日曜に日曜らしく過ごそうという強迫観念がない。
とても自然穏やかな気持ちで、仕事しよ、と選択できる。
そして平日も無理に遊ぶ事はせず、仕事することになる。
別に気負うことなく、仕事する毎日である。

42歳で人生の折り返し地点くらいだと思うが、誕生日の抱負として大層なことを念ずることもない。
80歳過ぎても一生仕事、一生勉強と日々精進できてればええなあ、と思うくらいのものである。
個人自営業者となって以来、この気持ちに変わりない。

いつかリタイヤして、悠々自適、過去回想しつつ余生を満喫したい、などと思ったことがない。
人を使役して、自分は昼間から好き放題過ごすのだ、と思う事もない。
そんな抱負を語る人に会うと、よほど現状が大変なのだろうと案じてしまう。
自分の裁量で精一杯仕事できることほど幸福なことはない。

仕事があってはじめて視線がきっちり前方を向く。
現在を足場に未来をキッと見据える視線が生じる。
もし仕事がなければ、過去のどこかで人生の時間が途絶えてしまうことになる。

月がなければ地球の地軸が23.4°に保てないのと同じで、仕事がないと人間は軸がぶれて、夢遊病者さながら無為を彷徨う者となる。

義務負う具体的な仕事が失われると、人の時間は、機能を損なわれるのだ。
認知症というのは、未来が損なわれた結果生じる症状なのではないだろうか。

私はいくら歳とっても、私が死ねば困る人が大勢いるに違いないと勘違いしつつ、明瞭な責任感のもと、日々仕事し続ける人生を選びたい。

先日、芦屋や西宮に住む星光の同級生何人かと甲子園口で酒酌み交わした。
生活圏が重なっているから不思議でも何でもないかもしれないが、我らの毎日は、かなりクロスオーバーしているのであった。

谷口が昭和病院で診察するその目と鼻の先で私は尼崎COCOEで宮ッ子ラーメンをすすっており、高岡さんは歯科医院の通勤の際、そうとは知らず我が家の前を何度も通り過ぎており、岡本の奥さんの実家が眼科医で我が子らはそこで診察を受け、その奥さんは目の前の公園で子を遊ばせ、その脇をごんたくれの我が子らが疾走する。
そして、てんでばらばら、それぞれが北新地の五鉄という同じ店で、誰かと会い、美味い美味いと食事しているのであった。
見事なほど日常交差し、なおかつ全く気づいていないのであった。
再会を機に、ご近所のよしみ含めて、今後交流が盛んとなっていくであろうこと、誠に目出たい。

中学高校の多感な6年間をともに過ごした彼ら星光の仲間はすべて、私という人間が建造される過程で、かけがえのない原材料を提供してくれた無二の登場人物たちである。誇るべき友人であり、自尊心の主要な源泉をなす存在といっても過言ではない。
彼ら星光のメンバーとの交流で得たエッセンスは、私の中で現在なお不可欠な要素として脈々と息づいており、今回の再会によって、立ち位置こそ違えど、未来に渡って、身近に感じつつ付き合えるというのは、実に頼もしいことだ。

例えれば、仮面ライダーの一場面で、昔のライダーが勢揃いするような心強さ。
心丈夫を感じつつ、昔のライダーの力を借りる事なく、ここはおれにまかせろ、と独りでとっとと敵を倒すのが、男冥利である。

星光の仲間のほとんどが、専門職に携わる個人プレイヤーの仕事人である。
会社勤めする組織人自体少ないのだが、勤め人となった場合でも、専門職としての立場を確立している。
組織名は後景に下がり、個人として聞こえ高い存在となる。いずれ会社を辞めて独立する。
組織率いる代表者もいるが、そもそも、突出したスキルを持つ超専門家からスタートし、巡り巡った運命で、組織率いるに立場に至ったというパターンである。

会社の管理下に納まり返るような従順な知性がいないというのは、星光の欠点かもしれない。
受け身的に口開けて、モチベーションというエサを組織からもらって食むような奴がいない。
自らモチベーションを喚起し、さっさと勉強して自分の立つ瀬を作ってしまうので、組織での歩留まりがすこぶる悪い。

そして、願わくば、我が子には、個人プレイヤーの仕事人であってもらいたいと思う。
長時間の作業をものともしない知力と体力を養成し頑健な建造物が構築できる土壌を作ってもらたい。
仕事し始めたときにぐんと加速飛躍できる奥深い底力と価値観が備わる場で切磋琢磨し学んで欲しい。

以上、私が42年前に誕生したのと同じ、天王寺区バルナバ病院で生まれた二人の息子への、誕生日メッセージである。

追記
個人プレイヤーの仕事人が一番偉いなんて、勘違いしてはならない。
世には、人を束ね大仕事するような規格外の大人物もいる。企業人でも主要メンバーは、時が時ならば何者にでもなったであろう迫力と能力を備える。
数々の雇用を生み出し世に貢献、多くの幸をもらたす事業家も数々いる。
そんな中、個人プレイヤーなんてこじんまりした、チンケなものだ。
しかし、前記の立場や人物などなろうと思ってなれるもんではない。
親心として、精進すれば果たせる最初の目標として、まずは一本立ちできる能力を身につけなさいと示唆しているのである。
その後は、自分の力を越えた次元の話となる。