KORANIKATARU

子らに語る時々日記

奈良葛城の地でヤンアメに魅了される


長男がソロで歌ってソロで踊る場面がある、そう聞いたので予定を変更し家族で見学に訪れた。

放課後は友達と学校に残って勉強したかったという二男をクルマでピックアップし、奈良葛城にある西大和に向かう。
見るべきものは目にしておいた方がいい。
勉強なんていつでもできる。

ヤングアメリカンズの開演は午後4時。
ぎりぎり間に合った。

昼過ぎからからポツリポツリ降り始めていた雨はいつのまにか止んでいた。
奈良山間の緑の香り含んだ清涼な空気を胸いっぱい吸い、会場となる体育館へ向かう。


来客者用のパイプ椅子などがズラリと並ぶ会場を想像していたが、まさかの体育座りでの鑑賞であった。
ステージ間近であっても段差がないので前の人の頭が視界に入る。

私は後方で立って見ることにした。

照明がいったん落ち一瞬の静寂が訪れた後、ステージが始まった。
出だしはタップダンス。
パフォーマーが一人また一人とタップを踏み、その数が徐々に徐々に増えていく。
ついには総勢40名。

体育館に小気味いいステップの音が響き渡り、床を伝ってライブの振動が伝わってくる。

高を括って当初想像していたような素人芸とは大違いだ。
彼らヤングアメリカンズのパフォーマンスは、途方もなくハイレベルなものであった。

ダンスが勢いを増し力強い歌声が館内を更に震わせていく。

かつての歌謡番組、夜のヒットパレードを思わせるように、各所各所にスポットライトが当たり、懐かしのアメリカン・オールディーズのサビの部分が歌われる。
キャロル・キングでありビーチ・ボーイズでありエトセトラエトセトラ、どれもこれも聴き馴染んだ名曲だ。

強弱さまざまな歌に合わせて、奔放かつ統制のとれた動きで躍動感たっぷりのダンスが繰り広げられる。

あまりに素晴らしく、私は出だしからあっけにとられたまま。
どれくらい素晴らしいかと言うと、半べそかきそうになるほど素晴らしい。
二男を連れてきて正解であった。

私だけでなく見学に訪れた父兄誰もがプルプル頬震えるような感動を覚えたに違いない。

戦後生まれの日本人にはアメリカに理想を仮託するような心根があってそれが自我の一要素となっているとも言われる。
そうであることをカラダで感じて、それでもいいではないかと心開かれるような清々しさを感じた。

第一幕のラストは、井上陽水の少年時代。
日本の名曲だ。
休憩の前に和心のチューニングに戻してくれる。心憎い演出であると言えるだろう。

同時並行で行われているドイツ公演の場合、ここにはジンギスカンが来るのかもしれない。


第二幕は中3男子を交えたパフォーマンスとなる。
3日間の練習の成果を見せる場だ。

中3男子の面々に緊張といった様子はあまり感じられない。
ええい、ままよ。なるようになる。
いい感じで開き直り、肩の力が抜けている。

つまり皆がその場を楽しんでいる。

日本独特の真面目実直な重石がとれたよう。
チャクラが開かれた、そのような状態と言えるのかもしれない。

閉じた系で閉じこもっていた自我が、外に向かって開く。
声が出て、カラダが動く。
か細かった声が太く強くなり、ぎこちなかったダンスが軽やか自在となっていく。

皆が心から楽しそうに歌って踊る。
笑顔満面。
単なる笑顔ではなく、まるで光り輝くよう、まぶしいような笑顔である。


学年団の教師もパフォーマンスに参加している。

アメリカを代表する映画音楽に合わせ、寸劇のようなパフォーマンスが繰り広げられる。
素朴ではあるが一体感があり連帯感があって、素朴であればあるほど、感動的だ。

無事、皆がその成果を見せ切った。
出来不出来など関係ない。
力を合わせてやりきった、そのような高揚感に場が包まれる。

学年主任から愛情あふれる言葉が中3男子にかけられ、最後には学園長までマイクを握り、アメリカンなノリで皆を労った。
「のってるかい」、これが言えるリーダーは稀有であろう。

奈良葛城にある西大和。
この学校は今後引き続き際立った先導的存在として「あり得べき理想の教育」を実現し続けていくのであろう。

さてさて、今秋のアメリカ留学の準備は整った。
1ヶ月でも3ヶ月でも好きなだけ行ってくればいい。

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